第17回 アメリカと日本の排出量取引制度の動向
排出量取引制度のしくみと動向を紹介

島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
2025/04/08
環境リスクマネジメントに求められる知識
島崎規子
大学関係の主たる内容は、駒澤大学経済学部、城西大学短期大学部、城西国際大学経営情報学部大学院教授などを歴任し、同大学定年退職。城西国際大学では経営情報学部経営情報学科長、留学生別科長などを務めた。大学以外の主たる内容は、埼玉県都市開発計画地方審議会委員、財務省独立行政法人評価委員会委員、重松製作所監査役などを務めた。
アメリカにおける現行の温室効果ガス排出量自主報告制度は、1992年のエネルギー政策法 セクション1605(b)(Title XVI, Section 1605(b) of Energy Policy Act of 1992)に基づくものです。 2010年に、排出量取引制度の導入を含む包括的な気候変動・エネルギー法案“American Power Act”が発表されて以降は、本格的な排出権取引制度が活発化しています。日本の自主参加型国内排出量取引制度(JVETS :Japan's Voluntary Emissions Trading Scheme)は、環境省が主導で2005年4月から開始しています。第15回、第16回に引き続き、アメリカと日本の排出量取引制度のしくみと動向を紹介いたします。
アメリカは、2001年京都議定書からの離脱後、2002年2月に気候変動政策(Clear Skies and Global Climate Change Initiative)を発表し、温室効果ガス排出量自主報告制度の改訂強化を示しています。この気候変動政策は、2002年から2012年の10年間で国民総生産(GDP :Gross Domestic Product)当たりの温室効果ガス排出量を18%削減すること、自主的な努力による国内目標の達成を目指しています。
2010年には、排出量取引制度の導入を含む包括的な気候変動・エネルギー法案が発表されています。その概要の一部は、図表1のとおりです。
アメリカでは、2015年、既存の発電施設に対する排出規制「クリーン電力計画(CPP: Clean Power Plan)」が発表されて、クリーン・エネルギー・インセンティブ・プログラムへの排出枠の発行量が示されました。発行上限は、合計で約2.7億トン-CO2に相当する排出枠です。
アメリカの排出量取引制度の主たる特徴は、次のとおりです。
①キャップ・アンド・トレード方式で行われる。 |
クリーン電力計画は、州計画に基づき実施されますが、アメリカ全体では、2030年までに2005年比で炭素排出を32 % (8億7,000万トン)削減する目標が示されています。
例えば、ワシントン州の排出量取引の場合は、2020年に州知事が、排出量取引制度を提案して、2021年気候コミットメント法が成立しています。2023年に州環境省は、Cap and Invest 規則を施行しています。さらに2023年には、カリフォルニア・ケベック州と制度をリンクさせる方針を暫定決定したと発表しています。
ワシントン州の第1遵守期間は、2023年から2026年です。削減水準は、2023年が6329万トンCO2e、2024年が5852万トンCO2eと公表されています。また償却方法は、毎年11月1日までに前年排出量の30%以上の排出枠を償却すると示されています。
最近のアメリカの「パリ協定」からの離脱は、地球温暖化対策に及ぼす影響は大きく、今後、脱炭素社会の形成を阻むことが懸念されています。
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