SFC(慶應大学湘南藤沢キャンパス)研究所 防災情報デザインコンソーシアムは11月20日、「2020年最悪シナリオ発表~オリパラに向けて安心安全をどう実現するかVol.2」を都内で開催した。

写真上から東氏、大木氏、熊丸氏、岡本氏、鈴木氏、村井氏

防災科学技術研究所 災害対策リスク研究ユニット研究員の東宏樹氏、日本防災デザインCEOの熊丸由布治氏(元在日米陸軍消防本部統合消防次長)、SFC環境情報学部教授の武田圭史氏らが発表者となり、同環境情報学部長の村井純氏、同政策学部教授の鈴木寛氏(元文部科学副大臣)、同環境情報学部准教授の大木聖子氏がコメンテーターとして登壇した。パネルディスカッションのコーディネーターは弁護士の岡本正氏。

東氏は、2020年7月のオリンピック大会初日にM7.9の小さな南海地震が発生し、従来の想定に比べて死者数は20分の1以下の1000人弱が死亡。その後、余震が発生し、世論も分かれるなか大会を開催したところ、パラリンピック大会開催中にM8.6の東海・東南海連動型の地震が発生。数万人規模の犠牲者が発生するというシナリオを発表した。大木氏はこれに対し、「地震学者は地面の下の部分しか考えることができないが、このシナリオは人間の要素がからんでいて非常に面白い。また、地震学的見地から歴史を振り返ってもあり得るシナリオ」とした。

熊丸氏は、ある日突然、国立競技場上空でIED(即製爆弾)をつんだドローンが爆発。一般市民が重軽傷を負い、警察・消防関係者が現場へ出動するなか、現地に事前に仕掛けられた車輛爆弾が破裂。さらにその爆発物が放射線拡散装置(RDD)すなわち「ダーティボム」だということが判明したというシナリオを発表した。続いて武田氏からは、オリンピック開催1か月前からソーシャルネット上にテロ予告が大量に発生。開催と同時に日本中の主要なサーバや屋外のサイネージ、スマートフォンなどのデバイスが乗っ取られるとしたインターネットセキュリティ攻撃によるシナリオを挙げた。

シナリオを受け、岡本氏は「災害の収束には、IT技術や専門家による情報提供支援と生活再建のサポートが不可欠。自然災害では特にそれが重要だ」と訴えた。鈴木氏は「オリンピックなどの大会で最悪のシナリオが発生した場合、さまざまなディシジョンメイキングが必要になる。重大な局面で決断ができる人材を育てることが急務」とした。村井氏は最後に「課題は重たいが、オリンピック・パラリンピックを機会に、これからも災害やハザード全体に対してたくましい日本をつくるのが本日の狙い。今後もこれらのプロセスを続け、共有していきたい」と総括し、これからの方向性を示した。