【ダッカ時事】12日に実施されたバングラデシュ総選挙では、1991年の民主化後の政界をリードしてきたハシナ前首相と故ジア元首相の姿がなかった。権力を握ると互いに弾圧し合った両氏は2大政党の「女帝」として君臨。ジア氏の長男で、総選挙を制したバングラデシュ民族主義党(BNP)のタリク・ラーマン党首は、報復の連鎖を断ち切ることができるか手腕が問われている。
 ジア氏は1945年に生まれた。独立戦争の英雄で大統領だった夫のジアウル・ラーマン氏が81年に暗殺された後、イスラム教の価値観を重視するBNPの党首に就任。91年の総選挙に勝利し、女性初の首相となった。
 47年生まれのハシナ氏は75年のクーデターで、初代大統領の父、ムジブル・ラーマン氏が殺され、亡命生活を余儀なくされた。帰国後、世俗的なアワミ連盟(AL)の党首となり96年の総選挙でジア氏から政権を奪った。
 両氏はいずれも政権を失った後に返り咲き、強権を発動。第2次ジア政権下の2004年には、ハシナ氏も参加したALの集会で爆発が起き、20人以上が死亡。過激派組織を通じたBNP指導部の関与がささやかれた。一方、09年に政権を奪還したハシナ氏は独裁色を強め報復。BNP幹部やその支持者が拉致・殺害され、ジア氏は事実上の自宅軟禁に置かれた。
 ハシナ氏は24年の反政府デモを受け、隣国インドに逃亡。ハシナ政権崩壊に伴い、ジア氏は自由の身となったが、昨年末に持病の悪化で死去した。
 英国から約17年ぶりに帰国し、ジア氏の後を継ぎBNPを率いるタリク・ラーマン氏は「未来志向の新しい政治文化の確立」を掲げ、報復の連鎖を断ち切ると表明している。しかし、BNPとALの支持者の対立は根深い。今回の総選挙で排除されたALは新政権に対決姿勢を取るとみられ、長年続いた政治の混乱を収拾する道筋は見えていない。 

(ニュース提供元:時事通信社)