みずほ総合研究所・経済調査部主任エコノミスト 宮嶋貴之氏

2年後に迫った2020年東京オリンピック・パラリンピック。開催地の懸念材料のひとつが、宿泊施設不足だ。訪日外国人増加をめざす観光政策もあり、国内では大都市圏を中心に宿泊施設の新設計画が着々と進行している。だがオリンピック期間中の3週間余りは東京オリンピック・パラリンピックがすでに関係者向けに4万6千室を確保しており、一時的に供給不足が起こる可能性が高く、事前の対策がカギになる。ホテル需給予測のレポートを発表するみずほ総合研究所・宮嶋貴之氏に聞いた。

Q:2020年のホテル客室不足問題について、みずほ総研が昨年9月にレポートを発表されています。まずは概要を教えていただけますか?

2020年の日本国内の宿泊需要について、2016年で試算した当社レポートをアップデートする形で発表しました。2016年の試算では最大年間3.3万室不足するとしたものと比べて、2017年版では最大年間0.4万室と、ひっ迫懸念は大幅に後退する結果となりました。(みずほレポート2017年版https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/report/report17-0922.pdf

不足数が大幅に減った要因として、ます近年のインバウンド客数の増加によって、三大都市圏中心にホテルの新設計画が大幅に増加していることがあります。加えて、民泊やクルーズ船を利用する外国人旅行者が増加傾向にあり、ホテルの宿泊需要を押し下げていることも、需給ひっ迫緩和が見込まれるもう一つの要因です。

写真を拡大 2020年のホテル需給予測。ホテル供給シナリオによって、標準の場合大阪で最大0.38万室不足(上表)。下振れの場合、大阪で最大0.91万室不足するほか、中部・石日本の広範囲で不足する試算が出た(下表)。(出典:みずほレポート「2020年のホテル不足の試算」)