2018/10/05
東京2020大会のリスク対策
Q:レポートでは、東京オリンピック開催期間中に懸念される東京都内のホテル不足についても試算されています。こちらもひっ迫の心配は緩和されているでしょうか?
ロンドン五輪の時を参考にすると、オリンピック期間中の8月に、東京都内では最大2万室程度客室が不足する可能性があるという試算結果となりました。ロンドン五輪では大会期間中の2012年7~9月期にロンドン市に宿泊した外国人客が、前年同期より減少するという現象が起きました。これは大会期間中の混雑やホテル価格高騰を避けて観光客が減少する「クラウディングアウト効果」と呼ばれています。一方で、英国人の宿泊者数は大会期間中に大幅に増加しており、今回東京五輪でもこの効果を加味して予測値を算出しています。ただし、仮に2020年8月の東京でホテル不足が起きても、神奈川・千葉・埼玉まで含めれば、宿泊する部屋が見つからず、難民のような旅行客が出る可能性は低いと考えています。
さらに細かく期間中の日単位でシミュレーションをするにはさらに詳細な日次データが必要ですが、現時点では統計で公表されているのは年および月単位であり、それ以上細かい試算は困難な状況です。
Q:東京オリンピック期間中の需給ひっ迫は大きな問題でなくなっている?
オリンピック期間中に限って言えば、ホテル不足問題が発生するリスクはありますが、年単位で考えれば、大幅な需要超過となって客室不足の問題が深刻化する可能性は低いということです。ただし、昨年のレポートではホテル種別などより詳細なレベルで需給バランスを検証することはできておりませんでした。
近日中(10月中)に最新のレポート(2018年版)を公開する予定です。最新版の注目ポイントは、需給バランスをより詳細に検証していることです。旅館・ビジネスホテル・その他など、タイプ別のホテル需給バランスを検証しています。また、前回都道府県別だった不足室数を、一部の地域ではより細かく市区町村別で試算することにもチャレンジしています。

東京2020大会のリスク対策の他の記事
- 五輪中のホテル不足、周辺エリアで吸収可能
- 五輪で通勤や物流の混雑対策、企業は必須
- 【講演録】国際的大規模イベントのセキュリティ対策
- りんかい線、コミケの経験五輪に生かす
- 五輪での熱中症をどう防ぐ
おすすめ記事
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
-
-
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方