米国とイランの戦闘終結に向けた合意では、日本の経済・社会に混乱を与えた原油・石油製品の供給安定化が期待される。トランプ米大統領は、ホルムズ海峡について通航料を伴わない開放を全面承認するとSNSに投稿した。だが、実質的な正常化には数カ月を要するとの見方もある。中東依存のリスクが顕在化した日本は調達の多角化を継続し、平時から備える必要がありそうだ。
 トランプ氏の発表について海運関係者は「一方からの話であり、確たる状況になるのを待っている」と述べ、米イラン双方の動向を固唾をのんで見守る。4月の停戦合意時には海峡封鎖が継続され、航行正常化への期待が一気にそがれた苦い経験がある。海峡には機雷敷設の可能性も指摘される。国土交通省幹部は「安全性に対する評価が必要になる」と語った。
 中東情勢悪化が浮き彫りにしたのは原油の中東依存度が極めて高い、日本のエネルギー安全保障上の弱点だ。紛争前には原油輸入の9割超、ナフサは実質8割程度が中東頼み。このため2月28日の開戦以降、政府は官民で代替調達を推進した。
 調達先はホルムズ海峡を経由しない中東原油や、米国・中南米など多岐にわたり、南スーダンやブルネイからも確保。8月にはカナダ原油も到着する予定だ。この間、備蓄原油も放出し、政府関係者は「(ホルムズ依存の)リスクに対するコストが明らかになった」と指摘。合意を受け、経済産業省幹部は「何が国全体の石油調達のあり方として望ましいか考えていく」とコメントした。
 原油やナフサ由来製品の価格動向も焦点だ。4月の輸入単価は、前年同月比で原油が37.9%、ナフサが49.1%それぞれ上昇。合意で下落したが、高値で調達した原油・石油製品は今後幅広い消費財へ価格転嫁されるとみられ、経済活動全体への影響が懸念される。
 今回の紛争で、イランは対米交渉カードとしての海峡封鎖の有効性を理解したとして「パンドラの箱を開けた」(石油化学工業協会の工藤幸四郎会長)との危惧が漏れる。「また同じようなことが起こるかもしれない。(合意で)時間を買えたと思うべきだ」(同)とし、調達先の多角化とともに脱炭素化の加速を訴える声も出る。 
〔写真説明〕ホルムズ海峡=5月17日、オマーン・ムサンダム半島沖(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)