2026/07/08
ハウツー
企業でクマ対策マニュアルが必要な理由
クマによる人身被害が全国で相次ぎ、山あいの工場や事業所では「従業員がいつ遭遇してもおかしくない」状況が生まれている。しかし、地震や豪雨と違い、クマ出没を想定した社内マニュアルを備える企業はまだ少ない。本紙は、こうした現場の声を受け、企業がそのまま使える「クマ対策タイムライン」を作成した。
「防災」の発想をクマ対策に
本タイムラインの最大の特徴は、クマを「自然災害と同様の事業継続上のリスク」と位置づけた点。従来、クマ対策は目撃してから慌てて対応する「事後型」になりがちだった。タイムラインでは、豪雨災害などで用いられる警戒レベル(危険度)の高まりに応じて、とるべき行動をあらかじめ段階的に決めておくという気象庁・内閣府の防災気象情報のレベル分けの考え方を参考に、企業の対応を独自に4段階で構成した。
クマ出没時の企業対応タイムライン【4段階】レベル1:平時に行う予防策 レベル2:近隣で熊の目撃情報が出たときの対応 レベル3:複数出没・警戒強化時の対応 レベル4:敷地内侵入時の緊急対応 |
レベル1(平時・予防):出没情報がない段階。生ゴミの密閉保管、草刈りによる見通し確保、連絡網の整備など「クマを寄せ付けない」対策を日常業務に組み込む。
レベル2(警戒):近隣(おおむね半径5キロ程度)で出没情報が出た段階。屋外作業は複数人で行い、鈴やクマ撃退スプレーを携帯。毎朝の情報確認と朝礼での共有、出没地点の地図化を行う。
レベル3(高度警戒):出没が複数発生し、自治体が警戒を強化した段階。不要不急の屋外活動を延期・中止し、必須業務のみに絞る。
レベル4(緊急事態):クマが敷地内に侵入するなど切迫した危険がある段階。屋外活動をすべて中止し、敷地を閉鎖。安否確認システムで全従業員に周知し、人命保護を最優先する。
各レベルの発動と解除、屋外作業中止や避難指示の判断は、あらかじめ定めた「クマ対策責任者」が担う。判断者を一人に決めておくことで、現場の迷いをなくす狙いだ。
内容は環境省の公開マニュアル等を参考に
記載した個別の対策は、環境省「クマ類の出没対応マニュアル(改定版・2021年3月)」など公的機関の公開資料などを参考に、その考え方に沿って構成した。
同マニュアルは、人の生活圏への出没を防ぐ基本として、生ゴミなど誘引物の除去・管理と、クマが侵入しにくく隠れにくい環境の整備を挙げる。本タイムラインのレベル1(生ゴミの密閉・施錠管理、草刈り・見通し確保・侵入経路点検)はこれに対応する。また同マニュアルが重視する、出没に備えた連絡体制の構築、対応方針の事前作成、研修や想定訓練の実施は、タイムラインの連絡網整備、目撃報告ルート、図上演習・実地避難訓練の各項目に反映した。
遭遇時の行動指針(大声を出さない、走って逃げない、背を向けずゆっくり後退する、子グマでも近づかない、建物・車両へ避難する)や屋外作業時の鈴・クマ撃退スプレーの携行、単独行動を避けることも、同省が入山者向けに示す注意事項を取り入れた。これに加え、事業所という環境の特性を踏まえ、建物・車両への避難方法を独自に行動指針案に盛り込んだ。
「完成品」ではなく「叩き台」として
タイムラインには、目撃報告書の様式、緊急連絡先の一覧枠、工場内の危険エリアマップ、負傷者が出た場合の応急対応(圧迫止血、AED、119番通報から救急隊への引き継ぎまで)の手順も案として含めた。新入社員教育から実地避難訓練まで、教育・訓練の体系も示している。
本タイムラインは、各社が自社の立地・業態に合わせて改訂して使う「叩き台」として提供するもの。クマの出没状況や対応体制は地域によって大きく異なる。実際の出没時には、自治体・警察の指示や地域の対応方針を必ず優先してほしい。
(注記)本マニュアルは、環境省「クマ類の出没対応マニュアル(改定版)」等の公開資料を参照して作成したものであり、環境省その他公的機関の監修を受けたものではありません。安全を保証するものではなく、実際の対応は必ず自治体・警察等の指示に従ってください。
※本タイムラインは、6月30日付け「今週のニュース解説」アーカイブなどからダウンロードできます(リスク対策.PRO限定 ※リスク対策.PROライト会員はアーカイブをご視聴いただけません。ご注意ください)。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/113052
ハウツーの他の記事
- 企業向けクマ対策マニュアル|出没時に備えた4段階タイムライン例
- 年末年始にサイバー攻撃は約2倍以上増加する
- その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
- 自社の危機管理の進捗管理表を公開
- 新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/07/14
-
-
AIによるメール監査で悪意なき不正リスクを事前に検知
昨今、企業の不祥事が多発している。不正会計や金銭の着服、独占禁止法で禁止される談合やカルテルなどが発覚することで企業の信用が失墜し、業績悪化にいたるケースが多い。企業の不正を防ぐ方法で有効なのが、社内のメールモニタリング(メール監査)だ。国際訴訟・不正調査のパイオニアであるFRONTEO(東京都港区)は、リーガルテック分野で培ったノウハウから自社開発したAIエンジン「KIBIT(キビット)」をコア技術に、メール監査で企業の不正リスクを検知するサービスを提供する。膨大な量の電子データから、どのように不正を発見し、未然に防ぐのか。代表取締役社長の守本正宏氏に話を聞いた。
2026/07/13
-
-
困難な工場のサイバーセキュリティ強化机上訓練で隠れていた現場力を発掘(参天製薬)
製造業にとって最も避けたい、売上に直結するサイバー攻撃による工場の稼働停止。しかし、セキュリティ対策の導入は工場ならではの困難があり、簡単にはいかない。参天製薬(大阪市北区、伊藤 毅代表取締役社長)は、サプライアーのランサムウェア感染をきっかけに、2017年から国内外の工場のサイバーセキュリティ対策を強化。工場との対話を重ね、着実に進めている。
2026/07/10
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/07/05
-
「情シス任せ」「コンサル任せ」では終わる
社会機能の維持に欠かせない業種でサイバーインシデントが相次いでいます。事業停止の影響は一企業のビジネスの域を超えサプライチェーン全体に波及。いまやセキュリティは経営の重要課題です。企業を取り巻くサイバーリスクと求められる対策について、日立ソリューションズの扇健一氏と辻󠄀敦司氏に聞きました。
2026/07/03
-
-




※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方