セクハラは、採用される側の求職者が弱い立場に置かれがちである構造で起こりやすい(写真:Adobe stock)

はじめに

2025年6月、「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。この法律は3つの法律の一部を改正することをとおして、主として、①カスタマーハラスメント対策の義務化、②求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策の義務化、③女性活躍の更なる推進を図るものであり、本年10月1日から改正法が全面的に施行されるに至りました。

この度の改正は事業主に対して必要な措置を義務づけるなど重要なものになっていますので、【前編】【中編】【後編】の3回に渡って、上記①~③に関する主なポイントについてご説明したいと思います。

【中編】である今回は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」)の一部改正として、②求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策の義務化を取り上げてみたいと思います。

男女雇用機会均等法の一部改正

就職活動・転職活動というのは、雇用契約・労働契約の締結に向けたものであり、本来、将来の契約当事者として対等な立場でマッチング活動が行なわれるものであるはずです。

求職活動でのセクハは、社会の意識の高まりなどもあり、問題視されるようになった(写真:Adobe stock)

しかしながら、実際には、採用する側と採用される側とで立場・力関係の不均衡があり、往々にして採用される側である求職者が弱い立場に置かれがちであるといえます。

そして、いわばそのような立場・力関係の不均衡を背景に、採用担当者から求職者に対してセクシュアルハラスメントをはじめとするハラスメントが行なわれることがあり、とりわけ求職活動等におけるセクシュアルハラスメントにつき、近年のハラスメントに関する社会の意識の高まりなどもあって、問題視されるようになっていました。

そして、この度、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの問題に対応すべく、男女雇用機会均等法の一部が改正されました。この改正の中には、国や労働者の責務の新設も含まれていますが、男女雇用機会均等法13条では、求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等として、次の各事項が定められて定めています。

  • ●求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関して事業主が雇用管理上必要な措置を講じる義務(1項)

    ●労働者が事業主による求職者等からの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由とする当該労働者に対する不利益取扱いの禁止(2項)

 

上記のうち、事業主の義務(1項)がこの度の改正のメインであるといえますので、今回はこれを中心に取り上げてご説明します。なお、その際、男女雇用機会均等法13条3項に基づき厚生労働大臣が策定している「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「指針」)を引用・参照します。

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントとは

男女雇用機会均等法において求職活動等におけるセクシュアルハラスメントという文言が用いられている訳ではありませんが、事業主の義務を定めた13条1項に拠ると、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントは次の①~③の要件で構成されるものであるといえます。

  • ①求職者等の求職活動等におけるものであること

    ②事業主の雇用する労働者による性的な言動であること

    ③求職者等の求職活動等が阻害されるものであること

 

上記要件に関し、各文言の意義・ポイントは下表のとおりです。

なお、当然のことではありますが、同性に対するものも含まれますし、また、被害者の性的指向又はジェンダーアイデンティティ(性自認)がいかなるものであるかも関係なく、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに該当し得ます(指針1頁)。