海外では日本と法制度が異なるため、安易に日本的な発想で社内調査を始めないことが重要です

1.子会社不祥事が親会社に与える影響について

これまで概観してきた企業不祥事とその調査の問題について、今回は、企業不祥事の主体に着目し、親会社自体の不祥事と子会社の不祥事においてどのような差があり、社内調査に当たっていかなる点に注意すべきかを考えてみたいと思います。ここでいう「子会社不祥事」というのは子会社固有の不祥事をいい、子会社を利用した親会社の不祥事を除きます。なぜなら、子会社を利用した親会社の不祥事は、例えば、一時的に子会社を所有し、株価を吊り上げて子会社を高値で売り抜いたりする場合や、粉飾決算事案において、不良債権の飛ばし先として数多くの子会社を作り、そこに不良債権を全部飛ばして「塩漬け」にする場合ですが、この場合、子会社というのは単なる不祥事隠しの手段でしかなく、不祥事の実態は「親会社不祥事」そのものであるからです。 

ところで現代は、子会社の不祥事というものが、子会社だけで終わらない時代です。現在東証に上場している会社のうち13%から14%は親会社が保有する子会社です。この数字から見ても、子会社不祥事が社会に与えうる影響の大きさが分かりますが、より本質的には、一般消費者の評価の点において、親会社の不祥事と子会社の不祥事とが一体化していることです。子会社不祥事イコール親会社不祥事とは厳密には言えない場合でも、一般消費者にとっては、親会社の不祥事そのものととらえられることはあります。例えば、食品偽装に際し、ブランド名が関わっている場合には、子会社の不祥事イコール親会社の不祥事とみなされてしまいます。雪印や日本ハムの事件では、いずれも親会社の会長が辞任するといった事態に発展しました。ブランドを持った商品に関する不祥事に対しては、消費者の視線が厳しく、親会社にあってもそのレピュテーション・リスクは極めて大きいのです。 

レピュテーション・リスクにとどまらず、子会社が行った不祥事で親会社が行政処分を受けたケースもあります。例えば、2010年、親会社である田辺三菱製薬という会社とその子会社バイファという会社による遺伝子組み換え製剤に関する試験データの改ざんという事件が起こりました。これ自体は子会社の不祥事であったものの、親会社が放置していたことから、子会社だけでなく田辺三菱製薬自体も業務停止処分を受けることとなったのです。 

子会社の不祥事が親会社自体の不祥事に発展していくケースもあります。これは、不祥事自体を隠蔽すること、すなわち不祥事を隠してしまう場合です。つまり、親会社が子会社の不祥事を発見し「これが公表されたら、大変なことになる」として不祥事自体を隠蔽してしまうような場合などがこれに該当します。子会社の不祥事を親会社が封印した場合、二次的な、しかも一次的な不祥事よりも大きな不祥事になってしまいます。身綺麗であった親会社が、子会社の不祥事に巻き込まれてしまって信頼を失う瞬間です。会社のブランドやレピュテーションは、長い年月をかけて会社関係者の情熱を傾けた努力と戦略と資本投下によって初めて確立されるものですが、それをともすれば一夜にして失う、そのような性質のものなのです。

2.子会社固有の不祥事とその原因

子会社不祥事が発生する原因は何でしょうか。すべての子会社に当てはまることではもちろんないですが、忠誠心が親会社と比較して若干低いことを不祥事原因の1つに挙げることができます。忠誠心の低さはモラルハザードにつながり、会社のお金を着服横領するなどの不祥事を度々引き起こすことになります。また、子会社自体に不祥事の防止能力がない場合、親会社の監視が行き届いているか否かが、子会社不祥事の発生を決定づけることがあります。特に、本国から離れた海外子会社などにおいて顕著ですが、親会社の監視が行き届かないため、親会社のコンプライアンスルールも十分に浸透せず、子会社独自の商法、ルールを許してしまい、例えば、現地の慣習に従って公務員に賄賂を提供してビジネスを円滑に進めようとするような事態に発展します。海外子会社が所在する現地の言語や文化等の違いがこのような親会社との距離感にさらに拍車をかけています。また、これも海外子会社に特にみられるところですが、人事の停滞を子会社不祥事の原因として挙げることができます。海外子会社を持つ会社は、言語の問題もあって、希少な人材をマネジメントすることによる人事交流が滞りがちとなります。国内の部署間にみられるような定期的な人事交流は困難です。人事の停滞が現地業者や公務員との癒着を生み、不祥事に至るケースが散見されるのです。 

このように、子会社不祥事の原因は、一般的に考えられる企業不祥事の原因とは異なった側面があり、その防止のために特別な対策を必要とします。

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