2016/07/26
BCMの実力を測ろう
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■改善計画の手順
評価レポート(前号の「BCM活動報告」の書式を参照)に記載された改善項目(同書式「4.改善項目と次回の達成目標」)については、今後の活動スケジュールに組み込んで次の達成目標を実現しなければなりません。改善は日常の業務活動の合間を縫って行われるため、いくつかの実施要件についてBCM事務局と改善を担当する側とですり合わせをし、無理のない形で進める必要があります。ここでは前号の報告書で提示した2つの改善点のうちの一つ(囲みを参照)について、社長の同意が得られたものとしてその後の手順を説明します。
到達度・満足度について:複数の部課から出ている「教育に時間を割く意味がない」という意見については、 |
①まず、改善を担当する人々に集まってもらい、次の実施要件を取り決めます。PDCAサイクルのPlan(計画)に当たる活動です。具体的には次のとおり。
・改善テーマ:「部門ごとのBCM教育の必要性と有効性を理解させる」
・改善担当者:本社、サービス事業部X,Zの部課長Y,(指導担当)事務局、(教育カリキュラム作成)など
・改善方法:簡便で分かりやすい教育資料の作成と指導
・実施時期:2013年12月~2014年2月までの3カ月、など②改善活動の実施
これはPDCAサイクルのDo(実施)に当たる活動です。実施プランが決定したら、無理のないスケジュールで効率的に実施しましょう。
③改善活動の評価
これはPDCAサイクルのCheck(点検)に当たる活動です。次のように、途中の改善状況をチェックするタイミングについても目安を決めておくこととよいでしょう。たとえば、2014年1月 および2月上旬の2回、各部課社員に集まってもらい、教育の必要性と有効性の理解度について簡単なヒアリング調査を実施する、といった内容です。
最終的な評価は、事務局が行う総合的な評価作業に反映されます。これについては前号を参照してください。
④評価後のフォロー
最後はPDCAサイクルのAct(改善)です。依然として改善が必要ならば、次のステップで同じようなサイクルを回すことになります。この活動で教育についての理解 不足が解消されたのであれば、"教育の中身を充実させること"が次のステップの目標となるでしょう。 BCM活動の報告から改善の実施までの流れは、前ページの図のとおりです。参考に してみてください。
さて、これまで連載6回にわたってBCMの実力を測るための考え方と手順について説明してきました。この一連の流れがルーチン化できれば、BCMの通信簿もしくは健康診断の仕組みはひとまず完成したことになります。とは言え、BCMの活動には、実行したことや達成したことを、すぐには結果に結びつけられないもどかしさがあります。今日訓練を実施し、参加者全員満足しても、その満足度や自信は、スポーツトレーニングの成果を翌日の競技試合に活かすようにすぐに災害対応に活かすことはできません。これが他の業務活動に比べてモチベーションが上がらなかったり、形骸化しやすい主な理由であるように思います。
BCMは組織が災害対応力を高めるために取り組むべき活動です。社員一人ひとりに非常時の役割と責任を自覚してもらい、その役割や責任をもとに能動的にアクションを起こせる態勢を身につけさせることです。そのためには、常にBCM活動の意義と目的を意識し、初心に帰って「われわれは何のためのこの活動を行っているのか」を忘れないようにすることが肝要です。BCMを継続するには、常にこのことを念頭におきましょう。 (完)
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