2017/03/10
事例から学ぶ
大林組では、BCPの基本方針として「インフラの復旧工事への協力」、「施工中現場の早期再開」、「施工済み物件の復旧支援」の3つを震災発生時に優先すべき業務と定めている。東日本大震災では、震災直後からインフラ復旧の協力体制を整え、早期の初動対応を実現。その後も全社一丸となって復旧活動に取り組んだ。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2011年9月25日号(Vol.27)掲載の記事を、Web記事として再掲したものです(2017年3月10日)。役職などは当時のままです。
■インフラ復旧体制を整備
多くの業種のBCPでは、被災時には優先度に応じて重要業務を継続させることに経営資源を集中させるのに対し、建設業では、通常業務に加えて、社会インフラの早期復旧という新たな業務が発生する。
東日本大震災では、あらかじめBCPで設定していた手順に従い、目標とする発災後30分以内で品川の本社内に震災対策本部を設けた。翌12日の朝までには、東北支店管内の約400人に及ぶ全従業員の安否が確認できたという。
同社では、鉄道や道路など、緊急性を要するインフラの復旧体制を整えるため、発災から約1時間後にはウェブ会議システムを利用して、震災対策本部と全国の主要支店や技術研究所と震災対策本部会議を開催した。
震災当日の夜には、都市土木や橋梁、基盤技術の専門家など、東北地方の被災状況を調査する9名の調査隊を結成。翌12日の朝には、ヘリコプターで、現地の被害状況の確認へ向かった。ヘリコプターは、非常事態時に優先的に利用できるようにあらかじめ契約していたものだ。
BCPでは24時間以内にインフラ復旧の協力体制を整えることを目標にしていたが、被害状況の確認も含め、目標は達成できたという。鉄道や道路のインフラの被害状況や海岸沿いの津波の調査など、調査隊が得た情報は、その後の対応方針の決定に生かされた。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方