2017/05/24
従業員の命を守る「職場の医学」
熱中症に関するよくある誤解?
■汗が出なくなったら熱中症だ(汗をかいているので熱中症じゃない)?
多くの熱中症患者は汗をかいています。汗をかいているから熱中症じゃないと判断してしまうと治療開始の遅れに通じます。
■熱中症はひどい脱水で起こる?
脱水が熱中症を起こしやすく、悪化させやすいのは事実ですが、脱水になる前(運動開始後わずか20分程度)でも熱中症になります。熱中症だからといって全てに脱水があるわけではありません。
■体温は高くなかったので熱中症じゃない?
どこ(身体のどの部位)で測ったのかが重要です。熱中症の判断には、耳、口、おでこ、そして腋の下で測った体温は使いません。必ず身体の中心に近い体温(深部体温)を直腸で測定します。
■熱中症で倒れたけど意識がハッキリしているから大丈夫(軽症)だろう?
初期に軽症に見えても後から病状が進行して悪化することがあるので注意が必要です。
熱中症を予測する(その1)
以下のような項目が熱中症を起こしやすい原因だと言われています。環境(高温多湿)、高い運動強度、暑さへの順応不足、もともとの基礎体力不足、熱がこもりやすい服装、肥満、熱中症にかかったことがある人、睡眠不足、飲酒、脱水、発熱、基礎疾患のある方、薬を内服中の方。
熱中症を予測する(その2)
湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature(WBGT)
熱中症の発症を予測する指数で「暑さ指数」、「熱中症指数」などと言われます。元々はアメリカの軍隊で開発されましたが、広く一般的に高温環境下での身体活動に当てはめることができます。単位は気温と同じ℃で表されますが、気温と湿度そして輻射熱(陽が当たる、火のそばなどの影響)が加味されます。過去のデータではWBGT(暑さ指数)が25℃を越えると警戒レベル、28℃を越えると厳重警戒レベルで熱中症患者が増えるとされています。ハイシーズンにはリアルタイムで環境省の熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp)にも掲載されますが、個々の作業環境によって条件は異なりますので、実際の作業現場でのWBGT値の測定を行い、予防に役立てましょう。
| ※WBGT(湿球黒球温度)の算出方法 屋外:WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 屋内:WBGT=0.7×湿球温度+0.36×黒球温度 |
熱中症を予防する
何事も予防が第一です。WBGT値が高ければ作業を行わないというのも安全のための選択肢です。行うのであればWBGT値を下げるための手段をとります。遮光、冷房、換気、服装に注意し、休憩をこまめに取ります。
喉が渇いていなくても水分補給を行います。汗をかいたあとは水分のみならず塩分も補給するようにします。ミネラルウォーターと塩のタブレットやスポーツドリンクをこまめに補給してください。アルコールやカフェイン含有飲料は脱水を助長させるので口にしてはいけません。
高温多湿環境下での作業に入る前にはある一定の順化期間(作業環境に慣れ、適応させるために計画的に設ける期間)を設けて徐々に慣らしていく必要があります。
作業内容によっては防護服のようなものを身に付けるかもしれませんが、できるだけ熱のこもらない涼しい服装を心がけます。炎天下での作業時には必ず帽子をかぶりましょう。
作業中に少しでも体調がおかしいと感じたら早めに申告しましょう。また監督者は作業者を継続的に観察し、少しでも変化に気付いたら作業を中止させましょう。
普段からの体調管理を怠らず、睡眠不足や二日酔い(アルコールは脱水を引き起こします)などで出勤しないようにします。医師から処方されている薬の中には熱中症を起こしやすいものもあります、服用中の方は事前に主治医に確認しておきましょう。
肥満の方が熱中症にかかりやすいので日頃から体重、体型を適正に保ちます。体力のない方が熱中症にかかりやすいので運動などで体力をつけましょう。
熱中症のあと、現場への復帰はいつですか?
アメリカスポーツ医学会の熱中症患者の運動再開に関する推奨が参考になります。
・治療終了後、1週間を目途に病院を再受診。
・運動再開は涼しい環境から開始し、徐々に運動時間と強度を上げる。
・2週間以上掛けて徐々に高温環境に慣らしつつ順応させる。
・4週間経過しても症状(疲れ易い等)再発があり、元の運動強度に戻れない場合は再度医師の診察を受ける。
・全く問題なく2~4週間以内に高温環境下で、元の運動強度に戻る事ができれば完全復帰は可能。
上記の様にかなり細かく段階を踏んで運動を再開するように推奨されています。つまり今シーズンの夏に熱中症を起こせば同じ作業環境に戻ることができるのは、上記スケジュールでは早くても涼しくなる頃(秋口?)でしょうか?
プロスポーツ選手であれば今シーズンは棒に振り、企業人であれば今期は職務内容の変更、配置換えとなります。そうならないためにも、十分な予防策を講じてください。熱中症は恐い病気ですが、十分な知識と準備で予防が可能な病気です。
(了)
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