(エコノミー症候群は、ビジネスでもファーストクラスでも条件さえそろえば車のなかでも起こり得る病気です。photo by photoAC)

熊本県内のエコノミークラス症候群 46人に

熊本県によりますと、一連の地震で避難生活が長引くなか、県内でエコノミークラス症候群で入院が必要とされた患者は、5月1日午後4時現在、46人となり、このうち1人が死亡しています。内訳は、男性が10人、女性が36人で、年齢別では65歳以上が30人、65歳未満が16人となっています。
(2016年5月2日、NHK News Web より抜粋)

編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年5月25日号(Vol.55)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです(2017年2月23日)。

エコノミークラス症候群とは?

 

長時間のフライトに伴って発症したことが注目され、いわゆる「エコノミークラス症候群」と呼ばれますが、エコノミーじゃなくてもビジネスクラスでもファーストクラスでも条件さえそろえば(飛行機に関係なく)いつでもどこでも起こり得る病気です。

長時間足を動かさずに同じ姿勢でいると、足の血管(静脈)に血のかたまり(血栓)ができ、これが血の流れにのって肺の血管に詰まる(塞栓と言います)病気です。最初は大腿から下の足がむくんだり、赤く腫れて痛みを伴うことがあります。

これは足の静脈に血栓ができている状態(深部静脈血栓症)です。この血栓が血の流れにのって肺に詰まる(塞栓)と、胸の痛み、呼吸困難や失神を起こし、重症であれば心停止に陥ることもあり、肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)と言われます。

どんな人が起こしやすいのでしょうか?

以下にあてはまる方は特に注意が必要です。

(1)高齢者
(2)足の静脈瘤がある
(3)足の手術を受けた
(4)骨折やけがで動けなかった
(5)悪性腫瘍(がん)がある
(6)深部静脈血栓症、心筋梗塞、脳梗塞を起こしたことがある
(7)肥満
(8)避妊薬(ピル)を内服中
(9)妊娠中または出産直後
(10) 生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症等)
(11)喫煙者

まずは予防が肝心です!

長時間同じ姿勢(車の中で座ったままなど)を続けないようにし、適度に足の運動(できれば歩行)をします。また、筋肉が血液を流すポンプの役目をしますから、日頃から足の筋肉(特にふくらはぎ)を鍛えておきましょう。

また、血液が粘っこくなると固まりやすくなる(血栓ができやすくなる)ので充分な水分補給をしましょう。アルコールやコーヒーには利尿作用があり、身体の中の水分が逆に失われてしまいますので控えましょう。

現場の声から

DMAT(災害医療派遣チーム)としてミッション遂行中の我々の同志も、エレベーターが動かない建物内では階段の使用を敬遠しがちで結果として足の運動不足になり、また、水が流れないトイレの使用もはばかられ、ついつい水分補給を控えてしまっているという事実があります。エコノミークラス症候群について熟知しているはずのわれわれ医療職ですらこの現状ですから、避難所にいらっしゃる高齢者の方々であればなおさらのことでしょう。

おわりに

エコノミークラス症候群は、死亡することもある重大な病気ですが、正しい知識を持って対応すれば、予防することができます。被災地のみならず、是非多くの方々がこれらの情報を共有してくださることを期待します。本稿が何らかのお役に立つようでしたら幸いです。

(了)