おさらいしようエコノミークラス症候群
深部静脈血栓症と肺塞栓症
![鶴和 幹浩](/mwimgs/4/c/-/img_4cc1889bc05c216828e5bb8ef6dcb2d816876.jpg)
鶴和 幹浩
株式会社 指導医.com代表取締役 ERはEmergency Room(救急室)であり、Educational Resouces(教育資源)であるをモットーに救急医療の啓もう、ERでの教育・義務改善のお手伝いをします。医師(救急科専門医)。公衆衛生学修士。ICLS日本救急医学会認定指導者養成ワークショップディレクター。JATECインストラクタートレーナー。予備自衛官(陸上自衛隊衛生隊三等陸佐)。
2017/02/23
従業員の命を守る「職場の医学」
鶴和 幹浩
株式会社 指導医.com代表取締役 ERはEmergency Room(救急室)であり、Educational Resouces(教育資源)であるをモットーに救急医療の啓もう、ERでの教育・義務改善のお手伝いをします。医師(救急科専門医)。公衆衛生学修士。ICLS日本救急医学会認定指導者養成ワークショップディレクター。JATECインストラクタートレーナー。予備自衛官(陸上自衛隊衛生隊三等陸佐)。
熊本県によりますと、一連の地震で避難生活が長引くなか、県内でエコノミークラス症候群で入院が必要とされた患者は、5月1日午後4時現在、46人となり、このうち1人が死亡しています。内訳は、男性が10人、女性が36人で、年齢別では65歳以上が30人、65歳未満が16人となっています。
(2016年5月2日、NHK News Web より抜粋)
編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年5月25日号(Vol.55)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです(2017年2月23日)。
長時間のフライトに伴って発症したことが注目され、いわゆる「エコノミークラス症候群」と呼ばれますが、エコノミーじゃなくてもビジネスクラスでもファーストクラスでも条件さえそろえば(飛行機に関係なく)いつでもどこでも起こり得る病気です。
長時間足を動かさずに同じ姿勢でいると、足の血管(静脈)に血のかたまり(血栓)ができ、これが血の流れにのって肺の血管に詰まる(塞栓と言います)病気です。最初は大腿から下の足がむくんだり、赤く腫れて痛みを伴うことがあります。
これは足の静脈に血栓ができている状態(深部静脈血栓症)です。この血栓が血の流れにのって肺に詰まる(塞栓)と、胸の痛み、呼吸困難や失神を起こし、重症であれば心停止に陥ることもあり、肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)と言われます。
以下にあてはまる方は特に注意が必要です。
長時間同じ姿勢(車の中で座ったままなど)を続けないようにし、適度に足の運動(できれば歩行)をします。また、筋肉が血液を流すポンプの役目をしますから、日頃から足の筋肉(特にふくらはぎ)を鍛えておきましょう。
また、血液が粘っこくなると固まりやすくなる(血栓ができやすくなる)ので充分な水分補給をしましょう。アルコールやコーヒーには利尿作用があり、身体の中の水分が逆に失われてしまいますので控えましょう。
DMAT(災害医療派遣チーム)としてミッション遂行中の我々の同志も、エレベーターが動かない建物内では階段の使用を敬遠しがちで結果として足の運動不足になり、また、水が流れないトイレの使用もはばかられ、ついつい水分補給を控えてしまっているという事実があります。エコノミークラス症候群について熟知しているはずのわれわれ医療職ですらこの現状ですから、避難所にいらっしゃる高齢者の方々であればなおさらのことでしょう。
エコノミークラス症候群は、死亡することもある重大な病気ですが、正しい知識を持って対応すれば、予防することができます。被災地のみならず、是非多くの方々がこれらの情報を共有してくださることを期待します。本稿が何らかのお役に立つようでしたら幸いです。
(了)
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