2019/03/08
講演録
私どもが立てた「復興ビジョン」は、「社員と施工パートナーの安全と生活を確保する」「ホームオーナー(OB客)の復旧を最優先する」「事業計画は白紙とする」ということでした。ゴールデンウィークも迫るなか、社員達は使命感から「出社させてほしい」と言いましたが、社員の健康状態を優先し、2班に分けて強制的に休ませました。
私の方では、金融機関を回って「1億の赤字を出しますがいいですか」と事業計画変更を説明しました。こうすることで、社員にも堂々と「行け」と支援したわけです。また、日々変わる情報を正確に把握する為、社員の疲労度等を確認するために毎日会社を周ってヒアリングすることを欠かしませんでした。もちろん私自身の健康状態にも配慮しました。
弊社では普段、アフターサービスの電話がかかると、2日以内に訪問して処理します。そんなサービスを売りにしている会社が「いつ行けるか分かりません」としか答えられないことは、社員にもお客様にとっても非常なストレスです。多くのお客様からの厳しい電話に応じる女性社員の心も折れそうになります。そうしたクレームに対しては部長以上の男性社員で説明し、お互いの心のケアをしました。数カ月は弊社の社員は街に飲みに行くこともできないため、若手社員が中心になって会社の会議室で飲み会を開催しました。これはとても盛り上がり、次へのエネルギーになりました。
そして、日頃のお付き合いのある方々に、一番遠いところでは秋田から屋根の補修に来ていただきました。多くの素晴らしい技能を持った職人さんが支援に動いてくださいました。
そうした感謝を込めて、危機管理専門サイトの「リスク対策.com」と、大手住宅設備メーカーのLIXILの力を借りて、私達の経験をヒアリングしてもらい、「災害対策の手引き」というBCPマニュアルを作成してもらい、無料で公開させていただきました。私どもの経験の集大成がこの中に含まれています。
(了)
- keyword
- 東京都中小企業振興公社
- 新産住拓
- BCP
- 熊本地震
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方