国内:再び猛威を振るいだした結核


太平洋戦争直後まで、結核は日本では国民病あるいは亡国病といわれるほど猛威を振るった恐ろしい感染病でした。長い年月、多くの国民、特に青年層が結核に罹患して生命を失っていた事はよく知られています。例えば1943年の結核による死亡率は人口十万人当たり235人にも及んだという驚くべき高い数値が残っています。これは、2015年時の約150倍にも相当します。
戦後に国内に輸入され汎用されたストレプトマイシン等の抗生物質などの特効薬、法律の制定に基づく国を挙げての結核予防の取り組み、環境衛生の著しい向上など、さまざま々な努力がなされた結果、急速に結核罹患者は減少しました。その結果、結核は「過去の感染病」と言われる私たちには遠い存在の感染病になりました。    

ところが1996~1997年にかけて結核患者の発生は増加に転じ、国も「結核緊急事態宣言」を出し注意を呼び掛けました。その後、減少傾向に戻りましたが、結核は、警戒すべき再興感染症の一つとして注目されるようになり、現在に至っています。
2015年の日本の結核罹患率は、人口10万人につき14人という数値が出ています。この数値は欧米先進諸国のそれより数倍高く、そのため、日本は「結核中進国」と位置付けられています。

 

国外:2016年に130万人死亡

国外における結核の発生は非常に多く、現在でも最も防疫対策の必要な感染病の一つになっています。WHOによる2016年の結核疫学指標の推定値が出されています。要約すると、世界全体での結核罹患数は1040万 (人口10万対罹患率140)、エイズウイルス(HIV)感染の関与しない結核単独による死亡数は130万(人口10万対同死亡率17%)にも及んでいます。現在でも全世界に広がっており、人類の健康的な生活を脅かしているHIVは、感染者に免疫抑制をもたらすため、結核患者の症状をより重篤なものにさせる「危険因子」です。全世界の結核罹患者数1040万人のうち10%がHIV陽性であることが分かっています。なお、現行の死因統計では、エイズ合併結核死亡はエイズ死亡に分類されていますが、HIV陽性で結核で死亡したのは37万4000人と推定されています。
世界的には、結核は単一の病原体による感染症としては最大の死亡原因であることがWHOの調査により判明しています。WHOは、推定結核患者数・罹患率に基づき30の結核高負担国を設定しています。この30カ国で全世界の推定発生患者数・死亡数の85%以上を占めています。特にインドを筆頭に、次いで、インドネシア、中国、フィリピン、パキスタン、ナイジェリア、南アフリカ共和国の7カ国で、全体の64%を占めています。図1に2017年における結核多発国18カ国を示しています。