消毒は感染予防として依然有効だが(写真:写真AC)

はじめに

2020年8月末現在、新型コロナウイルス性肺炎(COVID-19)は国内を含む世界で猛威を振るっています。国内においてもかつて見ないほどのPCR陽性者の増加が首都圏のみならず全国で起きています。

COVID-19予防のためのワクチンあるいは治療薬が実用化されていない現在、予防手段として最も重要視されているのは、依然としてマスク、そして消毒剤です。感染者が激増しつつある今日、もう一度消毒剤について改めて考えてみる必要が生じています。

まず、消毒用アルコール(エタノール)です。日本薬局方消毒用エタノールとは、医療分野で消毒に用いられる製剤のアルコール外用薬のことです。一般用医薬品の区分では、第3類医薬品に指定されている医薬品です。雑貨あるいは雑品ではありません。

ところで、日本薬局方とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて定めた医薬品の規格基準書です。日本薬局方の構成は通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条からなり、収載されている医薬品については日本国内で繁用されている医薬品が中心となっています。

消毒用エタノールについて

日本薬局方では、消毒用エタノールは次の規格が定められています。すなわち、水にエタノール76.9~81.4vol%のみを含む無色の液体です。

消毒には通常消毒用エタノールが用いられるのですが、新型コロナウイルス性肺炎の発生が拡大して、消毒用エタノールが品薄になり入手が困難になりました。そのため厚生労働省は2020年3月23 日以降数回にわたり「高濃度エタノール製品に関する通達」を出し、代替消毒剤の補填につとめています。その内容は概ね以下の通りです。

1.医療機関等において、やむを得ない場合に限り、全国各地の酒造会社で製造・販売する高濃度エタノール製品を手指消毒用エタノー ルの代替品として用いることは差し支えない
2.医療機関等において高濃度エタノール製品を手指消毒に用いる際は、使用者の責任において「エタノール濃度が原則60%台以上であること」「含有成分にメタノールが含まれないものであること」を確認する
3.代替として用いられる高濃度エタノール製品は、医薬品医療機器等法に規定する医薬品または医薬部外品に該当せず、その製造、販売等について同法による規制を受けない

この特例措置により、医薬品製造業者以外の消毒用エタノールの製造・販売の道が開かれ、国税庁も特例として各種規制の緩和を行い、『飲用不可』と明示した場合、酒税が課されず、販売の際に酒類販売業免許も不要となることが決定しました。これにより、全国各地の酒造会社で消毒用エタノールの製造・販売が始まっています。