罹災証明の遅れについて

修理をすればすぐにでも元の家に居住できる人がいます。公費で解体して撤去すれば自宅の庭に簡単な自力仮設を立てることができる人もいます。みなし仮設として認められるのであれば自力で空き家を見つけて入居したい人もいます。生活再建支援法の適用を受け支援金がもらえると自力再建にすぐにでも足を踏み出せる人がいます。

しかし、それらは「罹災証明」という公的な被害認定がなければ、前に進めない仕組みになっています。もっとも、写真等の被害を認定できる証拠があれば、先に取り壊しても罹災証明は自治体の判断で出せるし、罹災証明が出ていなくても後から必ず出るということであれば、罹災証明がなくても仮設の申請を受け付けるという大岡裁きが可能です。

ただ、いづれにしても、罹災証明を前提とするならば、いかにしてその速度と精度を高めるかが問われます。

阪神・淡路大震災の時、約2000人の建築学科の学生や建築士さんの協力を得て、ほぼ1か月で50万棟の家屋被害調査を、都市計画学会と建築学会の協力でやり遂げました。専門性の高いスタッフを大量に集めれば短期間にできるということです。この場合、,行政事務だから行政職員でということにこだわらないことです。

昭和9年の函館大火の時、北海道庁は現役の北大の建築学生を臨時に雇用して、復興計画にあたらせています。行政職員にこだわるなら、臨時雇用すれば済むことです。

日本海中部地震など、阪神・淡路大震災の前は、罹災証明は自主申告でした。すなわち、調査員は被災者一人一人でした。被災の実態をもっとも知っている被災者に任せたのです。税金の確定申告と同じ論理です。もっとも、不正申告をすれば厳罰に処すのは当然です。阪神・淡路大震災の時、この自主申告のやり方をしようとして芦屋市は国から大目玉を食らいました。義援金の配分など公金に関わる認定をそんないい加減なやり方でしていいのかということでした。そこで、とても面倒な判定基準がつくられました(今はかなり簡略化されていますが)。

ここからいえることは、被災者を信頼することができるなら、あるいは保険会社とリンクすることができるなら、手際よく認定する道があると思うのです。
応急危険度判定とのリンクができないか、ドローンや傾斜自動診断などの技術が使えないか、とも思っています。今後のためにもいい方法を開発しなければなりません。

熊本の被災者の皆さんには、「今頃そんなことを言われても」とおしかりを受けかねないコメントでした。ただ、私自身も被災者の皆さんとは違った立場で、どうすべきか悩んでいます。