嘉納治五郎、五輪初参加と「英文日記」
スポーツによる国際平和主義を確認

高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2019/06/03
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
東京オリンピック大会が来年に迫り、チケットの抽選販売やNHK大河ドラマ「いだてん」によりムードは高まりつつあるようである。以下は、1世紀余り前のオリンピック物語である。
明治42年(1909)春、東京高等師範学校(東京高師、現筑波大学)校長嘉納治五郎は東洋初のオリンピック委員(IOC委員)に就任した。彼は、その翌年2年後に迫った明治45年(1912)スウェーデンの首都ストックホルムで開かれる第5回大会に日本からの代表選手の派遣を要請された。初のオリンピック参加要請である。
そこで彼は明治44年(1911)7月、大日本体育協会を設立し、推されてその会長となった。ストックホルムに派遣するオリンピック選手の予選会は11月18~19日に参加者91人を集めて東京の羽田運動場で開催された。100メートル、400メートル、800メートルの陸上単距離競争は三島弥彦(東京帝大学生、明治期の政治家三島通庸次男)が優勝した。マラソンは2時間32分45秒の驚異的世界記録を出した金栗四三(東京高師学生)が優勝した。日本初のオリンピック代表団は、役員(団長)嘉納治五郎、監督大森兵蔵(大日本体育協会理事)、大森のアメリカ人夫人で日本名安仁子(あにこ)が通訳、選手は単距離三島、マラソン金栗の2人と決定した。
三島、金栗の両学生選手は、明治45年(1912)5月16日夕、新橋発の急行で壮途に就いた。この日、東京高師では一度の壮行会では物足らないとして、再度寄宿舎食堂で600人の学友は共に杯を挙げて金栗選手の出発を祝し成功を祈った。席上、嘉納校長は「あくまでも日本男児の態度を発揮し、軽率な挙動をしてはならない」と注意した。「日本を代表する紳士たれ」と訓示したのである。講道館柔道の創始者嘉納は礼節をことのほか重んじた。
背広服に山高帽の盛装姿の学生金栗を先頭に送別の大旗を押し立てた600人の学生は大塚(現文京区大塚3丁目)の校門を、校歌を高唱しながら出て宮城前にまいり万歳三唱し、その後新橋駅に着いた。金栗らの一行は福井県の敦賀より出航し、シベリア鉄道経由で6月2日ストックホルムに到着した。半月の長旅であった。一行の中に嘉納団長の姿が見えず、嘉納は一行より遅れて単身大会へ出発した。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方