2016/06/03
【6月第1特集】 熊本地震の検証 6人の専門家に聞く“教訓をどう生かす?”
被災自治体の支援制度が必要
孤独にしてはならない
被災すると、実に多くの関係機関、マスコミがどっと押し寄せる。それぞれに支援の熱意、ミッションを持っているが、受け止めるほうは1つだ。重要な判断、要人対応やマスコミ対応は首長の仕事だが、非常に孤独である。たとえば、今後、仮設住宅用地を確保する時期が来るが、学校の校庭に建てるか否か、などはどちらに決断しても厳しい批判が待っている。
このとき、経験ある首長や補佐役がサポートしてくれれば、どれほど心強いだろうか。また、実務では、役所内部、関係機関相互の情報共有、連携の調整作業が非常に多数発生する。膨大な量があり、かつ不慣れな業務であるため、課長をサポートする人材、課長の相談役になる人材が必要だ。
現場でも、たとえば私は福祉避難所の調整に従事したが、ひとりを動かすために本人、家族、ケアマネ、施設幹部、担当の職員と多くの調整が必要だ。これを何十人と繰り返す。これからもっと増えていく。
東日本大震災、そして熊本地震の応急対策の現場では、消防、警察、自衛隊、国交省、水道、ガス、電気など組織的広域連携体制の力が光った。このシステムを市町村に持ち込むのはどうか。
たとえば、被災地で幹部職員として経験のある市町村職員の登録システムを作り、平時から内閣府兼務辞令を交付する。発災時には、直ちに内閣府の一員として被災地自治体に派遣し、それぞれの災害対策本部で首長、幹部職員を市町村の立場で支援する。さらに、現場で動ける一定の経験を持った市町村職員を登録しておき、災害時には要請を待たずに市町村に業務別に数十人規模で派遣する。このような行政版支援チームを制度化することが、小規模自治体を支援するには極めて有効と実感した。
鍵屋 一(かぎや・はじめ)
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授
東京都板橋区で防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長等を務め、2015 年4月から現職。
京都大学博士(情報学)。名古屋大学大学院講師、法政大学大学院講師、内閣官房地域活性化伝道師。地域防災全般、特に自治体の防災対策全般、災害時要援護者支援、福祉施設の事業継続計画(BCP)、マンション防災、地区防災計画
などを研究、実践している。NPO法人東京いのちのポータルサイト副理事長、NPO法人事業継続推進機構理事、認定NPO法人災害福祉広域支援ネットワークサンダーバード理事、(一社)マンション生活継続支援協会副理事長などで社会活動や講演活動を積極的に行い、防災・危機管理の情報発信を行っている。
【6月第1特集】 熊本地震の検証 6人の専門家に聞く“教訓をどう生かす?”の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方