2019/07/12
危機管理の神髄
最大の問題は、われわれの両耳の間にある
アルバート・アインシュタイン
もう一つの冷戦の遺産は、私たちの日常生活と核脅威の恐れの間の希望のれんが壁だ。悪いニュースは、この脅威の最高の否定者に、われわれの政府も含まれるということだ。なぜなら、彼らも人なので、われわれが信頼している人たちがこの国の準備をすることをれんが壁が妨げるのだ。
冷戦時代には、われわれの準備は、当然ながら表面的に過ぎなかった。われわれは、決してやる必要のないことの準備をしなければならないのか(みんな死んでしまうのだから)。
しかしそれはその時の事、これは現在の事だ。その時は、われわれは皆死ぬことは確かだった。今日は、大勢の人が死亡することは分かっているが、ほとんどの人は生き残る。当時は、確かに死ぬ人たちのために準備することは無意味だ。今日は、確実に生き残るほとんどのわれわれのために、準備することは絶対必要なことである。
地域に限定されない災害もある
スティーブン・ガンヤード, ニューヨーク・タイムズ 2009年5月17日
核攻撃の被害者になる以上、おそらく唯一悪いことは、それに対処しなければならない窮地に立たされた人だ。しかし、その人は誰だろうか。誰が、全ての災害の母を”所有している(責任を持つ)”のか 。
被災した市民に対する責任が政府にあると思うなら、それは政府の役人だ。後述するように 、災害の話をする際に、「政府」と言った場合、何を意味しているのか知っておかなければならない。
連邦や州政府に加えて、何千もの郡、市、町の政府がある。
しかし、これは細かいことだ。好むと好まざるとにかかわらず、全ての災害の母が起こると、責任は大統領にあるのだ。
大統領の真実のとき
大統領にとって真実のときは、実に暗い瞬間ではあろうが、携帯電話の衛星写真を見ている舞台裏でないだろう。それはもっと後、おそらくずっと後に来るだろう。ポラリス攻撃のシナリオで見たように、それは3日後、彼のチームが”仕事をする”のを見て聞いた後に来た。「絶望しているニューヨーカーのためにわれわれは何をしているのか?」「やるべきことで、何をまだやっていなのか?」、最後に「これらの事をいつやることになるのか?」といった詰問に対して、何も得られず、ただ無表情な視線しか返ってこない後のことだ。
ついには、「彼らが何をしているのか、誰も知らない。なぜだ?」 という感情が不安から恐怖に、最終的にひらめきへ と変わっていった。
直感のひらめきが真実のときだ。大統領が2つこと、1つは、状況は悪く、聞かされたよりもずっと悪いこと、次に、それに対して全くコントロールできないことであるに気付いたときだ。
選挙で選ばれた指導者が、何もできない窮地の現実を理解したその瞬間は、全く苦痛に満ちている。これらの政府機関(大統領に属する機関)は、問題の責任を持っていると考えていたが、実際には持っていなかったのだ。
そして、これらの政府機関は、問題の責任を持つことを期待されていなかったので、問題を追及し解決させる能力を修得しなかったのである。
この瞬間において、これらの機関は、選挙で選ばれた指導者には多くの意味で無価値である。そして、指導者を無力にする。
真実のとき、室内の雰囲気は説明しがたい。不安と恐怖が心に飛び込んでくる。
そして、嫌悪だ。選挙で選ばれた指導者をその立場に置いた制度に対する嫌悪、弱々しく無力であること彼に隠していた人々に対する嫌悪。
われわれは、準備せねばならない
ポラリス攻撃のシナリオは、あなたに日常では得られない将来を垣間見ることを与えてくれる。
米国とロシアは、高度警戒の核対応体制を作り上げたが偽警報には脆弱である。北朝鮮は、どんな紛争でも早期に核兵器を使用する戦術を示唆している。記述した出来事は、現実のものである。いまだ発生していない。しかし、起こるであろう。ここではない、今日でもない、どこかで、いつか。
それらが起こると、選挙で選ばれた指導者は、彼の真実のときを持つ。この時に彼は、やらなかったことに対する後悔で満たされる。
それらは、巨大災害に対する準備のために、国全体を動員することのように、日常の些細な事柄である。
しかしながら、つまらないことに思えるが、もし前もって実施されると、われわれの選択肢を増やすことができるのだ。それらが、国さえ救うことができる。
そこで質問が残る。われわれは「今、何をすべきか」と。
その質問には2つの回答はない。ただ一つしかない。われわれは、準備をしなければならないのだ。
(続く)
翻訳:岡部紳一
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
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