積み重ねてきた訓練が機能

迅速な対応ができた最大の理由は、大災害を想定した訓練を何度も積み重ねてきたことだろう。

イオンでは、東日本大震災より以前から、災害対策には力を入れてきた。45万人が参加する年2回のグループ全体の総合訓練に加え、エリアごとの訓練や、自衛隊や輸送会社など外部との連携訓練も行っている。今年3月には、日本航空と緊急支援物資の覚書も取り交わし、被災自治体や店舗に物資を迅速に運べる体制を築いてきた。

4月16日には熊本空港のターミナルが閉鎖されたが、緊急避難用大型テントを被災地に届けるため、長崎空港まで空輸し、空港から陸上自衛隊が熊本県上益城郡御船町まで運搬した。翌日から4月20日までに空輸は延べ49便に及び、陸送と合わせて計529万点の緊急支援物資および店舗販売用商品を被災地の自治体や各団体、店舗に送り届けた。「陸上自衛隊との物資輸送訓練を繰り返し実施していたことから、空港から避難所までのトラック輸送についても、現地の陸上自衛隊の方々にご担当いただくことができた」と津末氏は話す。

東日本大震災以降、イオングループでは、訓練の内容や、外部との連携について特に強化してきた。「グループ全体の訓練では、各社のボードメンバー全員に参加してもらっている。リアリティーのある訓練をやり続けなければいけないということで、従業員が犠牲になるような、これまでタブーとされた状況も想定し、かつ、ブラインド型(シナリオをあらかじめ公開しない方法)で実施をするなど、随時課題を洗い出し、あえて、対応が難しいシナリオにおいて訓練を実施することで、対応方法を改善してきた」(津末氏)。

熊本地震の被災者に向け、イオンでは、バルーンシルター2セットを熊本県御船町に届け広場に設置した。展張サイズは間口が22m、奥行き11.6m、高さ3mで1セット当たり約100人の収容が可能。御船町では最大50人程度がこのテントに一時的に避難した。写真は、6月23日に千葉市のイオンモール幕張新都心で行われたバルーンシェルター設置訓練時のもの

情報共有が機能

もう1つ、訓練とともに強化してきたのが情報共有の仕組みだ。「一番重要なのは、現地が正確に判断できる情報をいかに共有できるかということ。いろいろな判断をしなければいけない人たちが多数いるということで、IP無線をボードメンバーに渡したり、対策本部に入れなくてもiPadでテレビ会議に参加してもらうなどの仕組みを構築してきたことが今回の地震では奏功した」(津末氏)。

昨年からは、『イオンBCPポータルサイト』も立ち上げた。「東日本大震災では、支援物資の要請が来ても配送が遅れたがために商品が不必要になってしまったり、重複したりという事態が発生してしまった。こうした課題を解決していくために、必要な商品を必要なときに、必要な量、必要な場所に迅速に届けられる情報共有の仕組みを整えた」。ポータルサイトでは、必要な商品カテゴリーごとに、どのくらいの量が必要なのか、逆にどのくらいなら送れるのか、イオン側と商品を作るメーカー各社が画面上で相互に状況を確認することができる。さらに、これまでの災害における支援実績がデータベース化されているため、被災地からの要請がなくても現地で必要とされる商品を想定し、提案できる体制になっている。

現在同社では、情報共有をさらに強化するため、地図情報をベースに、災害情報や安否確認の結果、店舗施設の被災状況などがすべて一元化できる新システム『イオンBCM総合集約システム』を整備している。

「地震など災害があったエリアに我々のショッピングセンターがどのくらいあるのか、その状況が今現在どうなっているのかということがリアルタイムで把握できるシステム」(津末氏)。国内はもちろん海外までプロットされており、地図上の拠点をクリックすると、店舗の名称、住所、連絡先が出て、その次にライフライン、電気、ガス、水道の被災状況などが一目でわかる仕組みだ。今回の熊本地震では、通信が生きていたため、このシステムは使わなかったが、今後はグループ会社が同様のシステム環境下で、迅速に情報集約、共有する体制を作り上げていくとする。