2012/07/25
誌面情報 vol32
オリ ンピック対策で導入する企業も
連携や調整力を向上させる訓練の増加に伴い注目を集めているソフトがある。 スウェーデンに本社を持つ 4C Strategies が開発した EXONAUT だ オリンピック対策として同ソフトを取り入れ訓練をする企業も増えている。
イギリスの危機管理で必ず聞く言葉がある。ゴールド、シルバー、ブロンズだ。ゴールドとは経営層など組織全 体の意思決定に関わる人のことを指す。 シルバーは、部門の責任者、そしてブ ロンズが実務担当者だ。
実際に危機が発生した場合には、ブロンズが情報を収集・整理し、シルバーに報告する。シルバーはその情報にもとづきブロンズに指示を出し、結果をゴールドにあげる。ゴールドは全体の調整をしながらシルバーに指示を出し、 組織全体の舵を取る。
当然、それぞれの階層別に求められる能力は変わってくる。ブロンズなら 情報の収集・整理能力、シルバーはコミュニケーションとリーダーシップ、 ゴールドはコミュニケーションとより 高度なリーダーシップ、さらには先々までを見越した意思決定能力など。
4C Strategies が提供する EXONAUT は、こうした各階層のスキルや全体の調整力を高めるための訓練支援ソフトだ。
スウェーデン軍やイギリス軍も 同ソフトを活用。イギリスでは民間企業の引き合いが多く、2010 年に 4C Strategies UK を立ち上げてから現在 までにコンサル支援なども含めると数 百の機関が EXONAUT を訓練に取り入 れているという。最近では、ブリティッ シュ・テレコムをはじめとした大手企 業が同ソフトを使ってオリンピック対 策の訓練をしている。
■訓練を管理する
EXONAUT は、訓練のデザイン(目 的や目標の設定)から、具体的なシナ リオの設計、実際の運用、評価・改善 まで、訓練全体を管理する。普通、訓練を行う場合、目的や目標はワードで 作成し、シナリオはエクセルでタイム ラインを書き起こし、評価は別のドキュ メントで作成するなど、それぞれ別々 に行うことが多いが、EXONAUT では、 すべてを紐づけて管理でき、さらに複 数の機関に対してそれぞれの訓練の設 計ができるため、大規模な合同訓練などに特に適しているという。
訓練中における各参加者の対応はリアルタイムで一元管理される。
訓練のファシリテーター(進行役) は、 参加者の対応に応じて柔軟にシナリオ を変更することができ、より本番に近 い訓練が実現できるとする。
同社 UK の最高執行責任者を務める Aarti Anhal 氏は「インシデントへの対 応を現実に近い形でシミュレートをす ることで、どれだけのストレスが発生 するかをテストすることができる」と メリットを強調する。訓練は、データ として残るため、次回の訓練で、前回 の課題を新たな目標に加えるなど成熟 度管理にも役立てることができる。 Anhal 氏は実効性を高める訓練のポ イントとして、 「シナリオの設計にやた らと時間やお金をかける人がいるが、 そもそも何のために訓練をするのか、 何を達成したいのか、目的と目標を決 めなくては意味がない。そのデザイン に紐付けながら個々のシナリオを組み 立て、全体構成をしていくことが大切」 と話す。
また、訓練を行う際の注意点として 「個々の粗を見つけることが目的でな く、自分たちのプラン、プロセスの問 題点に気づき、どうすれば改善できる かを考えることで、参加者のモチベーションを高めていくことが、組織とし ての対応力を高めていく上での鍵」と 話している。
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