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現在、全世界で飛行機に乗る人は、1日あたり1,000万人以上と言われています。当然、数多くの日本人も、国内外で飛行機に乗っている状況です。そこで今回は、海外出張等で利用する際の航空機の安全性についてまとめてみました。航空機の安全を考える場合、いろいろな観点での評価が必要となります。今回は、1. 航空会社の安全性、2. 航空会社を監督する国の体制、3. 航空機自体の安全性の3点の指標から検証してみます。

1. 航空会社の安全性

以下の2つの団体が各種方法で航空会社の安全性を格付けしています。

・AirlineRatings(http://www.airlineratings.com/
・JACDEC(Jet Airliner Crash Data Evaluation Centre)
            (http://www.jacdec.de/

詳細は省略しますが、AirlineRatingsが2016年1月5日にウェブで公表した格付けでは、世界407の航空会社で最高の7を取得した航空会社は148社で、安全性が危惧される3以下の航空会社は50社でした。また、JACDECにおいても、運航管理、整備、危機管理・保安等の8項目、過去30年間の重大事故のデータ等を基に総合的に評価し、ウェブで公表しています。

2. 航空会社を監督する国の体制

航空会社を監督する国の体制の評価としては、ICAOが発表しているものがあります。
・ 国際民間航空機関(ICAO)
http://www.icao.int/safety/pages/usoap-results.aspx

ICAOは191ヶ国が加盟する国際機関で、航空機の安全については締約国にState Safety Programme(SSP)を導入することを義務付けています。このSSPには法制度、行政組織、免許制度、運航等の8項目が含まれていますが、1項目でも合致しない場合には「重大な安全上の懸念(SSC:Significant Safety Concern)」があるとし、当該国に是正を求めています。なお、現在、SSCに指定されている国は以下の通りです(カッコ内は指定された年)。

・アンゴラ(2015年)
・ジブチ(2008年)
・エリトリア(2010年)
・ハイチ(2012年)
・キルギス(2015年)
・レバノン(2013年)
・マラウィ(2009年)
・ネパール(2013年)
・タイ(2015年)

なお、SSCに指定され場合、欧州、日本での新規就航及び増便が大幅に制限されることとなります。例えば、2015年にタイがSSCに指定されたことから、日本政府は日本の法令に基づき、タイの航空会社が日本への新規就航及び増便を制限する措置を決定・実施しました。また、欧州委員会は、今後タイ当局との協力は継続するが、安全性に関する懸念が高まった場合、タイの航空会社をEU域内乗り入れ禁止航空会社リストへ追加する可能性があるとしています(タイ最大の航空会社であるタイ国際航空は安全性の格付け会社に抗議を行っています)。

また、米連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)はInternational Aviation Safety Assessment(IASA)においても、国の体制を評価しています。具体的には2段階で国・地域を評価するもので、カテゴリー2とされた場合には、当該国・地域の航空会社の米国への新規就航及び増便を制限することとなります。なお、2015年12月1日時点で、カテゴリー2に指定されている国・地域は以下の通りです。

・バングラデシュ
・バルバドス
・キュラソー島(オランダ領)
・ガーナ
・インドネシア
・セント・マーチン島(北部フランス領・南部オランダ領)
・タイ
・ウルグアイ

3. 航空機自体の安全性

航空機自体の安全性については、国際的な格付けはありませんが、一部の民間団体等が航空機別の事故データ等をまとめているものが複数あります。なお、これらのデータを見ると、大手航空機メーカーが近年導入している機材(航空機)では、事故率が低いことが見て取れます。

上記以外にも航空会社の安全性について評価する観点はいくつかあります。例えば、日本の日本航空、全日本空輸が加盟している国際的な航空会社のアライアンス等に加盟している航空会社は、加盟要件に安全性に関する監査項目が数多くあることから、安全性は相対的に高いとされています。

FAAがカテゴリー2に指定している国の中にはインドネシアも含まれています。そのため、同国最大の航空会社であるガルーダ航空もタイ国際航空と同様の状況となっています。タイ、インドネシア等のASEAN諸国については、日本企業の進出が加速しており、当該地域で赴任・出張等で航空便を利用することが大幅に増加していますが、このような状況を勘案し、安全対策に努めることが肝要です。

いずれにしても、海外で航空便を利用する際には、日本・欧米等の大手航空会社を利用することが最も簡易な安全対策であると言えます。

(了)