緊急時の全社的連絡手段である安否確認システムの市場で急激な存在感を示しているのが、サイボウズスタートアップスの安否確認サービスだ。同社のシステムは東日本大震災後に開発を始め、2011年12月にリリースと、同社のシステムの中では後発だ。リリース当時、親会社であったサイボウズ社のグループウェアから踏襲したユーザーインターフェイス、一方通行では無いコミュニケーション機能、そしてクラウドをフル活用したシステムの堅牢性・安定性を強みとする。それらの強みと安価な価格設定が受け、リリースから5年の区切りとなる2016年12月中には有償契約者数が500社を超える見通しだ。
 

クラウドシステムならではの高頻度バージョンアップ
 

 

同社取締役最高執行責任者の田里友彦氏は「東日本大震災の後、お客様から寄せられたご要望、現状のシステムの問題点などをもとに開発をスタートし、尚且つ他社よりもスピーディにバージョンアップを行ってきた結果、従来のシステムとの比較で負けることはまず無くなった。機能面でも価格面でも負ける相手はいないので、これからは業界トップシェアのセコム社を少しでも早く追い抜くよう中小企業から大手まで幅広い層にアピールしていきたい」と鼻息が荒い。

実際、同社は東日本大震災後に寄せられた要望の多くに応えて来た。『震災時、アクセスが集中しすぎてダウンしたシステムがある』と言われれば、後述するようにシステムが自動拡張する機構を取り入れた。また、『一斉送信を行ったがメールが届かない』と言われれば、メールだけではなくスマートフォンアプリやtwitterに連携してきた。

次に同社が対応を予定している要望は、『数万人規模のユーザーで、安心して利用できるシステムが欲しい』だ。エンタープライズ向けの新バージョンのリリースを今後予定しており、詳細なアクセス権限設定など、大手企業含め多様なニーズを取り込む。

営業面の話をすると、案件のほとんどは強豪とのコンペになり、田里氏は「最後の決め手を『使いやすさ』と『コミュニケーション機能』として、弊社のサービスを選択いただくことが多い。これからもユーザーの声を大事にして使いやすさを追求していきたい」と、選ばれる要素と今後の抱負を語る。


フルクラウドのインフラ構成で堅牢性高く


サイボウズスタートアップス社の安否確認サービスの特長の一つに堅牢なインフラ構成という点がある。フルクラウドで構成している同社のシステムはどのように構築されているのだろうか。

「IaaSとしてAmazon Web Service(以降、AWSと記載)を利用している。東日本大震災では日本国内のデータセンターが壊滅状態となり他社システムが機能しなかったしなかったことから、メインシステムの構築はシンガポールに行った。万が一、シンガポールがサービス不能状態となった場合は日本またはアメリカでサービスを再開することで、高可用性を実現している」と、同社テクニカルディレクターの小林武志氏は語り、その堅牢性をアピールする。

「災害時にはシステムへの急激なアクセス集中が予想され、これに対応するためAWSのAuto Scaling(自動拡張)機構を採用している。Auto Scalingは状況やタイミングに合わせてサーバ数を増減できる仕組みで、安否確認サービスではアクセスが増加した時はもちろんのこと、アクセス急増が見込まれる地震それ自体をトリガーにサーバの拡張を行っている。クラウドならではのサーバ数コントロールによってアクセス集中時でも安定したサービス提供が可能となった(小林氏)」と、その柔軟なインフラ運用による安定したサービス提供に自信を見せる。実際、直近に起きた地震である2016年4月の熊本地震では実際にサーバが自動的に拡張し、ユーザーはストレス無く利用できたという。

 

前述した通り、他社システムでは東日本大震災時には急激にアクセスが集中しすぎた結果、システムが停止してしまったケースが見受けられた。その不安を取り除くとなれば、これ以上にユーザーに安心を与えられるものは無い。IaaS市場で圧倒的世界NO.1のシェアを誇るAWSを利用しているからこその安心感なのだろう。

機能、価格、安定性、全てにおいて優位性を持つ同社の安否確認サービス。これからのさらなる進展に注目したい。新進気鋭の集団であるサイボウズスタートアップス。彼らは巨人を倒すジャックか、それとも風車と戦うドン・キホーテか。

 


サイボウズスタートアップス株式会社

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(了)