総合管理についての問題点

質問は次の7問です。
・カネの問題
・人間関係づくりの問題
・物資の分配の問題
・福祉施設のハード面の問題
・被災者の受け入れの問題
・マニュアルづくり  
・物資の分配の問題

では、具体的に見ていきましょう。
福祉施設として被災者を延べ何人(2016年度中)受け入れたかを尋ねて、示しました(表)。

福祉施設として被災者を延べ何人(2016年度中)受け入れましたか?(自由記述 ※延べ人数)

写真を拡大 ※発災日2016年4月14日~2016年度末3月31日まで

平常時、施設の在籍数は94施設(無記入8施設)で4388人です。災害発生後に福祉施設が受け入れた延べ人数は6378人+直接避難所に来た被災者の延べ人数合計6427人です。被災者を受け入れたことで在籍者が2.4倍に増えました。施設数では、避難所から振り分けられて来たのは40施設(42%)、避難所を通さず被災者が直接福祉避難所に来たのは35施設(37%)でした。

福祉避難所に自宅から直接行くのではなく、いったん指定避難所へ行き、そこで指示された人が福祉避難所へ行く段取りになっている自治体が多く、そのように市は広報をしています。熊本市もその方法を取っていますが、37%の施設ではルール違反が見られました。勝手に福祉避難所に来た避難者は1施設60~70人が最高で、その他の施設は人数が不明です。市の広報を知った上か、広報が不十分なため知らなかったためかは不明です。今後、福祉避難所の意味を市民に理解させ、真に福祉の制度が生かされるように、市は広報活動を改善する必要があると思います。

被災者が福祉避難所にやってきた人数は1~30人未満の施設が35(63%)です。残り20施設(37 %)では30~100人以上です。各区の最高人数は中央区の特養2520人、西区の養護969人、東区の軽費・ケアハウス100人、南区の生活介護(知的)221人、熊本市外の療養介護(身体)172人でした。これらの施設の定員は数十人規模で規模が小さいのですが、地震発生によりかなりの人数が来たため、財政的な負担に加えてお世話をする側の気苦労が絶えなかったことが分かります。自治体からの物心両面の支援が大いに必要と考えます。

福祉避難所が今後に向けての努力目標と方向性を「個人・市民」「施設」「地方自治体・国」として、以下に示しました。

 
 
 

今後どのような課題に対処するつもりですか(自由記述)と、尋ねました。

・提供食品の品数を最小限にし、むしろ衛生管理の徹底が重要
・ライフライン停止時の専門グループを社内で立ち上げる
・外部委託との協力体制づくりがある程度できた
・給食業務を委託したので備蓄も含めて両者の連携作りが必要
・給食業務を委託したので、救援必要、連携関係の構築
・給食業務を委託したので、マニュアルづくり必要
・日頃から確認・伝達を積み重ねておくことが必要

調理担当者の勤務は困難でしたか、の質問に、困難と答えた30施設が自由記述で答えた内容を示しました。

・時間調整をして勤務を可能にした
・夜間は男性のみ出勤
・通常、早、日勤、遅いと1人ずつのシフトだが、1人では不安なので早・日勤×2つずつのシフトに変更
・本震の際、早出は職場に泊まっていた
・被災した職員、道路の寸断もあったため、職員変更などで対応した

職員の勤務に係る困難さが多く挙げられました。交通事情が悪いため勤務に時間がかかったこと、家屋の崩壊、片付け、子どもや介護の問題などが発生したこと、避難所や車中泊をしながら勤務を余儀なくされたことなど多難な例が多く挙げられました(前号参照)。そのため総合管理では、勤務体制にさまざまな工夫が加えられていました。

福祉避難所として皆さまにぜひ伝えたいことは何ですか、と尋ねた結果を示しました(表)。

福祉避難所としてぜひ伝えたいことは何ですか?

総合管理のまとめ

① 人命の安全安心のため、福祉施設全体に耐震性の強化が必要です
② 福祉施設として必要以上に受け入れたため(人数オーバー)、ノロウイルスが侵入し大変でした
③ 介護施設の報酬の見直しが必要です
④ 日頃から自助、共助の強化が重要です
⑤ 防災マニュアルの整備が必要です
⑥ 地域住民も避難して福祉施設に直接来るため、福祉避難所の定義を市民に広報する必要がありました
⑦ 人事面での優遇措置が必要です
⑧ 受け入れ人数の検討が必要です

以上総合管理では、勤務面の改善、自助、共助の重要性、災害マニュアルの必要性、災害時の記録、施設の建築物の安全性の確認が重要であることなどが強調されていました。また、避難者の受け入れ態勢(人数の適正化)の検討の必要性が指摘されました。いずれも災害の体験者でなければ気付かない貴重な指摘であると考えます。

ヒトでは、地域とのつながり、情報交換の重要性が述べられていましたし、情報では情報交換の方法が模索されていました。

この震災体験で得られた貴重な問題提起を、より多くの人々が真摯に生かすことを望みます。事後処理で多忙な中、アンケートにお答えくださった福祉避難所の責任者、栄養士、関係の皆さまに心からお礼を申し上げます。

(了)