2016/12/01
ニュープロダクツ

建設コンサルタントの国土防災技術株式会社が開発・販売する『避難行動訓練EVAG(イーバッグ:Evacuation Activity Gameの略称)』は、ゲーム感覚で災害時の避難行動をリアルに考えることができる防災教育教材だ。一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が主催する2016年「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」の最優秀レジリエンス賞(教育・人づくり)を受賞した。EVAGを使った訓練では、仮想の町「イーバッグタウン」を舞台に、その地域で暮らす人々が災害に遭遇したとき、どうやって避難行動を取るか、シミュレーションをしながら考えることができる。豪雨災害編、津波編、地震編の3部構成で現在は豪雨災害編のみ販売している。津波と地震は順次発行予定。
訓練の参加人数は最低6人~最大24人。このほかに進行役と避難所係が各1人必要になる。参加者は、2グループ(1グループあたり3~6人)~4グループに分かれて、ファシリテーター(進行役)の進行に基づき、災害時の行動を疑似体験していく。所用時間は目安として100分~120分程度。
各グループは、仮想の町「イーバッグタウン」上で地区の災害危険性に応じて割り振られる。例えば、浸水が想定される地域はGグループ、洪水が想定される地区はVグループ、土砂災害の危険性が高い地区はAグループといった具合だ。さらに、参加者全員に属性カードが配られ、自分ではない「誰か」になり代わってゲームに参加する。属性カードは、性別、年齢、家族構成、職業、健康状態、近所付き合いの程度が示されている。
属性カードの例:「▽性別・年齢:女性30代、▽家族人数:2人(夫婦)、▽家族構成:夫(30代、会社員)、▽ペット:猫、▽住居:アパート1階、▽近所づきあい:あいさつ程度、▽健康状態:妊娠4カ月、▽今の状態:流産の危険があり3日前から自宅で安静中。夫は18時に帰宅する」
自分だけでなく、要援護者など支援が必要な立場を経験することで、実際の生活環境下でも、他者を想い助け合うことや、避難支援の必要性を理解してもらうというのが本教材のねらい。
進行役からは、「〇月〇日〇時、大雨洪水警報、氾濫注意情報が発表され、避難準備情報が出された。〇時までにさらに非常にはげしい雨が続く見通し」など、時間の経過とともに気象状況や、行政からの避難情報などがシナリオで提示される。各シナリオに対して参加者は、「自宅にとどまる」「避難する」「さらに情報を調べる」「避難支援をお願いする」など、自らの行動を決定していく。
一旦行動を決めると、その行動の妨げとなる、さまざまな課題が書かれたカードが手渡され、ロールプレイング的に状況が展開していくという流れ。参加者自身が課題と解決策を考えていくことで、災害時の課題に気づくことができる。
避難シミュレーションを終えた後は、自分たちが取った避難行動を振り返り、直面した課題を模造紙に貼り出していく。グループごとにディスカッションを行い、避難時に「こうしてほしかった」「こうすればよかった」と意見交換してもいい。
防災意識を高める教材には、地域の危険性や避難場所などを知ることで避難準備を啓発するDIG(簡易型図上訓練)と、避難所での行動について考えてもらうHUG(避難所運営ゲーム)が有名だが、EVAGは両教材の中間に位置する❝避難行動❞にフォーカスした教材と言える。
本体価格は8500円(税別)。問い合わせは、国土防災技術株式会社技術本部EVAG教材開発担当(048-833-0422)まで。
http://www.jce.co.jp/business/research_dev/07/index.html
(了)
ニュープロダクツの他の記事
おすすめ記事
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方