治療薬使用の工夫が求められる

河岡教授らの研究成果は、今後考慮せねばならない医療現場での適切なインフルエンザ治療薬の選択に、重要な情報を提供するばかりでなく、行政機関が今後のインフルエンザ対策計画を策定、実施する上で参考になる、重要な情報として活用されるものと思われます。

重要な点として、ゾフルーザ耐性インフルエンザウイルスが、ゾフルーザを服用した小児患者に高い頻度で出現することが分かったことが挙げられます。ノイラミニダーゼ活性阻害薬耐性ウイルスの場合も小児で高頻度に出現する傾向にありましたが。もともと免疫機能が成熟しておらず、インフルエンザウイルス感染経験の乏しい小児患者では、インフルエンザウイルスに感染した場合にウイルス排除に必要な免疫が十分に誘導されず、耐性ウイルスが発生しやすい可能性があります。小児患者におけるゾフルーザ使用については、耐性ウイルスの出現する危険度が高いことを考慮する慎重な判断が、臨床面で望まれます。

一つの新薬が開発され、市販されるまでには、莫大な労力、経費、時間が費やされています。そのように大変な過程を経て開発された新薬は、可能な限り長期間その有効性が十分に発揮できるように、用法を考え、慎重に使用することが何よりも重要です。

現在、複数種類のインフルエンザ治療薬が使用されていますが、薬品の種類により薬理作用は必ずしも同一ではありません。単独の治療薬を使用するよりも、複数の治療薬を組み合わせて使用するなど、多方面から、最善の治療効果を発揮させるための使用法を改めて検討する必要のある時に至っているのではないかと考えています。

(了)