2016/12/28
防災・危機管理ニュース

年末年始の高速道路の渋滞に頭を悩ませる親世代の読者も多いだろう。しかし渋滞を1つの「リスク」と捉えれば、事前の準備行動と能動的に情報を収集することによって軽減できる可能性は高い。日常の中で危機意識を醸成するためにも、そして年末年始を快適に家族で過ごすためにも、渋滞回避をミッションとしてクリアしてほしい。渋滞を科学する『渋滞予報士』として活躍する、東日本高速道路株式会社(以下、NEXCO東日本)の外山敬祐氏に、賢い渋滞の回避方法を取材した。

『渋滞予報士』とは、2007年からNEXCO東日本が発足させた「渋滞を科学するスペシャリスト」のこと。現在の外山敬祐氏で5代目になる。その使命はズバリ「高速道路の渋滞を減らすこと」。渋滞予測や渋滞原因のメカニズムを広報することで、渋滞を軽減している。
「予報士」とは同社が付けた愛称で、外山氏は同社の関東支社交通技術課に所属。渋滞の原因となる道路のハード対策の企画立案から、ドライバーへの正しい知識の普及まで広く渋滞軽減に取り組んでいる。もちろん同社は道路拡張などのハード部分も成果を上げているのだが、やはり1人ひとりのドライバーの心構えにより渋滞が緩和する可能性が高いという。外山氏に、渋滞回避の3つのポイントを聞いた。
もしかしたら原因はあなたかも?『サグ』のメカニズムを理解しよう
1、「サグ」のメカニズムを理解して速度低下を防げ
2、アプリなどの情報を活用して賢く渋滞を回避
3、何をおいても安全運転!
渋滞予報士の外山氏は「渋滞の原因に事故や工事をイメージする人は多いが、実は全体では2割にも満たない。約8割は交通集中と呼ばれるいわゆる自然渋滞だ。その自然渋滞をさらにみると、渋滞は『上り坂・サグ』と呼ばれる場所で約6割も発生している。すなわち、NEXCO東日本関東支社が管轄する道路の全体では渋滞の約5割は『上り坂・サグ』で発生しているのです」と、渋滞の一番の原因について説明する。

サグとは、下り坂から上り坂にさしかかる凹部のこと。英語の「sag」が語源で、もともとは橋や天井などの中心にできる「たわみ」のことを指す。上図のように、サグは上り坂であることにドライバーが気づきにくく、無意識のうちに速度低下を起こす。
ほんの少しの速度低下でも、後続車との間隔が狭まるため、後続車はブレーキを踏む。その次の車はさらにブレーキを踏むので「減速波」が発生。そのブレーキの時間は後ろに行けば行くほど長くなるので、最後の車は0キロ、いわゆる停車状態に陥るのだ。
外山氏は「渋滞を抜けるときに、「渋滞の先頭には何も事故など起きていないのに、なぜあんなに混んでいたんだろう?」と思うことがよくあるでしょう。それはサグが原因なのです」と話す。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方