(出典:Legislative Analyst's Office / Preparing for Rising Seas 表紙)

海面上昇前提に対策を提言

今回紹介させていただく報告書「Preparing for Rising Seas」(海面上昇への備え)は、米国カリフォルニア州の「Legislative Analyst's Office」(LAO)という機関から2019年12月に公開されたものである。LAO は、カリフォルニア州議会に対して財政および政策に関する助言を行う無党派の政府機関である。したがって本報告書は本連載でこれまでに紹介させていただいた報告書に比べて、より直接的に政策提言を行うことが意図された報告書となっている。

地球温暖化によると思われる気象災害の深刻化や海面の上昇に起因する悪影響は世界各地で見られるが、840マイル(約1350キロメートル)もの海岸線を持つカリフォルニア州においても、この問題に関する危機感は高いようである。本報告書はそのような危機感に基づいて、同州内の地方自治体(注1)関係者、研究者、コミュニティグループ、NGO、連邦機関、および同州政府の関係者合わせて100人以上にインタビューを行い、また関連する多くの報告書や論文などをレビューしてまとめられたものである。

なお一般に、気候変動(climate change)に関連して行われるべきと考えられる活動には、温室効果ガスの排出量削減のように気候変動を緩和するための活動(mitigation)と、気候変動が発生・進行する(している)ということを前提として受け入れ、これによる環境変化に適応していくための活動(adaptation)があるが、本報告書の主眼は後者である。

まず提言の前提として、今後見込まれる海面上昇によってどのような影響が発生しうるかを示すデータが掲載されている。図 1 は太平洋に面している各地において予想されている、今後の海面上昇量である。これによるとサンフランシスコにおいては、2030年の時点で0.5〜0.8フィート(約15〜24センチメートル)、2050年には 1.1〜1.9フィート(約34〜58センチメートル)の海面上昇が見込まれていることがわかる(注 2)。

図 1. カリフォルニア州の太平洋岸各地における海面上昇量の予測値 (出典: Legislative Analyst's Office / Preparing for Rising Seas)


読者の皆様の中には、2フィート(約60センチメートル)程度ならあまり深刻さを感じないという方もおられるかも知れないが、海面が上昇することによって高潮被害がより深刻化するという側面を考慮する必要がある。図2は海面が現在より2フィート上昇した状態で10年に一度の高潮が発生した場合に予測される浸水域である(注 3)。

図 2. サンフランシスコ周辺で高潮の被害を受けると予測される地域 (前提条件については本稿の本文を参照のこと) (出典: Legislative Analyst's Office / Preparing for Rising Seas)


図の中央やや左側がサンフランシスコで、下側がサンフランシスコ湾、上側がサン・パブロ湾である。青色部分の色の濃さが浸水深の深さを表しており、最も色の濃い部分では12フィート(約3.7メートル)を超えると予測されている。概ね湾の入り口(ゴールデン・ゲート・ブリッジ付近)から見て奥の方に進むにしたがって、より深刻な被害が予測されていることがわかる。またオークランド国際空港(図の中央やや下)が完全に水没することが予測されている(注4)。

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