2017/02/20
未来のレジリエンス・テクノロジー
この地図を作っているボランティアをマッパーと呼びます。今、世界中で320万人のマッパーが参加しています。トップはドイツ、次いで米国です。日本はトップ5に入ることもあります。じわじわ増え始めて1日に平均100人がこの取り組みに参加しています。Googleマップの利用料金が上がるたびにマッパーが増えているようです。
2010年1月に20万人以上が亡くなった直下型地震がハイチで起きたときにも避難所の情報を地図上にどんどんプロットしていきました。NASAやJAXA、米軍のドローン画像など使える公開情報をかき集めて、世界中のマッパーが協力してアップデートしていくのがクライシスマッピングです。
2013年に伊豆大島で大規模な土砂災害が起きたときにも、大島の地図情報を公開しました。フィリピン、ネパール、アフリカなど世界各地で災害が起こった場所で役立つ地図を世界中のマッパーが参加して作っています。紙にプリントアウトしても使いやすい仕組みになっていて、現地で働く人はもちろん、空港にも張り出されるほど信頼され利用されています。
日本で情報がもっとも充実しているのは山手線内ですが、全国各地でマッピングパーティというイベントを開き、現地を歩いて地図を作っています。こういった活動には地元の人たちの協力が重要です。
東日本大震災の被災地である宮城県石巻市でも、チームに分かれて歩いて散策して、現地のおいしい食べ物を楽しんで、その日のうちに情報を地図に入力するイベントを開催しました。日本の山間地域や離島はGoogleマップでも道路やお店の位置は出てくるが建物がなかなか出てこないエリアでも、オープンストリートマップならば詳細なデータが見られる地域もたくさんあります。
自治体との連携も進んでいます。伊豆大島でも大規模土砂災害が起こる前にマッピングパーティを開催していて、火山噴火対策のシェルターなどをプロットしていました。2013年に土砂災害が起こったので崩壊エリアを含めた地図を素早く公開しました。
浦安市からは建物データの提供を受けて、学校や保育所、福祉施設などがマップに反映されています。中学生を対象に地図を使った1泊2日の災害対応訓練も開催しました。2日目にはiPadを持って地図を見ながら浦安市内の現地調査を実施しました。

■後編はこちら
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2375
(了)
未来のレジリエンス・テクノロジーの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方