2020/04/17
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
1. 可能な限り多くの避難所の開設
※内閣府 避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について
http://www.bousai.go.jp/pdf/hinan_korona.pdf
(内閣府 4月7日「避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について」から)
今までも避難所は過密状態でした。当然、3密を避けられる状態にはなりません。さらに都市部では避難場所も避難所の数も足りていません。ソーシャルディスタンスで2メートルの距離を置くなんてことは、とてもできそうにない避難場所や避難所が多くあります。もともとホテルや旅館を利用することは被災後に適用される災害救助法で対応していました。でも、災害が起こってからホテルや旅館を探しても利用できないことも少なくありません。事前に決めておくことは重要です。
この国の方針を受け、すぐに動き出した自治体もあります。
昨年10月の台風19号で避難場所が過密状態になった長野県では、4月10日市町村にホテルや旅館活用の通知を出しています。素早いですね。さらに防災科学技術研究所と協力し、県内のホテル・旅館と指定避難所の位置情報をデジタルデータ化。市町村の検討を促すことにしています。
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200414/KT200413ATI090027000.php
ただ、すでに緊急事態宣言が出されている自治体では、ホテル・旅館は新型コロナウイルスに感染した軽症者の滞在先としても検討されています。そんな中、災害対策としてどれだけのホテルや旅館が確保できるものなのか、未知の部分もあるでしょう。
避難所は、今まで以上に行くのは大変になる可能性を想定しておく必要がありそうです。
多様な避難所が確保されたとしても、さらに問題もあります。ガイドには、こんなことも書かれています。
(ガイドから)
共有場所に多くの人が集まってしまうことになるので、クラスターが発生するリスクがあります。学校のトイレは数が少ないです。支援物資の仮設トイレは届かないかもしれません。2メートル離れて順番待ちということになると、トイレの列はどこまで長くなってしまうのかと思います。居住スペースまで伸びそうです。
さらに怖いことに、避難所での3密の問題は避難した人だけではありません。
ガイドによると
・これまでの避難所と同じ運営をしようとする(3密状態になる)
・感染拡大を恐れて炊き出しができない
・避難所(従来型の避難所指定されている場所を想定)に感染者が出ても、隔離する場所がない
(ガイドから)
という問題も指摘されています。
炊き出しできない可能性、想定していますか?
感染した方が過ごす場所は確保できるのでしょうか?
今までの避難所運営では、全く対応できないかもしれないということが、これだけでも伝わってきます。
それだけでなく、そもそも
(ガイドから)
という、地域住民だけで災害対応を乗り切らなければいけないリアルについてはどうでしょう? 今、災害が起こるとボランティアは来ないのです! 熟練した自治体からの応援も来ないかもしれません。それなのに従来の避難所運営では足りず、新型コロナウイルスの感染防止対策もしなければいけないのです。このリスク、どこまで考えられているでしょうか。
他方で、「いや、私はそれでもボランティアに行く」という熱い思いを持った方もいるかもしれません。でも、それについては、
(ガイドから)
と指摘されており、ボランティアに行くことも迷惑になってしまいます。
さらにガイドには
・医療崩壊している場合、避難所で亡くなる人も増えることが想定される(避難所で(病院以外で)死者が出た場合、検視が必要なので警察に連絡
(ガイドから)
とあります。
支援者なしで、新型コロナウイルス対策も含めた避難所運営を地元で実施しなければならない状況は相当過酷です。でも、まだどこも訓練していない。これからの災害が本当に怖いと思うのはこの点です。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方