2020/05/11
ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために
患者を支える動物たち
患者の多くは、複雑な治療プランによって情緒的にも身体的にもかなり衰弱した状態にあります。幸いなことに、何千人ものナンシーさんのような患者たちは、さまざまなサポートアニマルの支えによってより快適に生活できるようになり、救急隊員がナンシーさんのようなケースに直面することが一般的になってきています。
革の握り手の付いたハーネスを着けた盲導犬が、街中で視覚障害者を先導し、通行の障害やその他多くの日常的な障害物を避けて安全に導いている光景は見慣れたものになってきています。
こうした人間と犬のパートナーシップは、もはや視覚障害者や車椅子での生活を強いられている人に限定されるものではありません。現在、他の多くの症状を抱える患者たちが、専門的な補助を受けることが可能になってきています。
さまざまな動物、主に犬が、防御や感知といった多くの新たな分野で訓練を受けています。例えば、犬は驚くべき感覚を持っているので、人間のパートナーに発作が起こりつつあることを警告するように訓練することができます(注1)。このパートナーシップは非常に重要で効果的であるため、犬が常に人間のパートナーのそばにいる必要があります。

サービスアニマルは、身体的症状を補助するだけでなく、しばしば情緒障害サポートも行います。
男女を問わず兵士たちは戦争から、警察官、消防士、救急隊員はわれわれの暮らす国内でまさに起こっている暴力行為の現場から、さまざまな程度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えて家に帰ってきます(注2)。こうした多くの人々が愛情あふれる補助犬に支えられて、効果的なサポートと治療を受けているのです。
これらの補助犬は、特定の任務を実行するように訓練されています。例えば、PTSDに苦しむ退役軍人に発作が起こったことを感知した補助犬は、その人の膝の上に足を乗せます。補助犬にこうした特別なタスクトレーニングが行われていることは、病院への搬送前の対応において救急隊員や救急救命士にも求められる障害を持つアメリカ人法(ADA)の定める要件により周知されています。
連邦および州のサービスアニマル規則は、曖昧に書かれている場合がよくあります。その結果、ペットとして飼っている犬はサービスアニマルであり、自分は障害者であると偽る人が出てきてしまっています。これは残念なことですが、プロとして相手を脅かさない程度に対応しなければならないのが現実です。
障害を持つアメリカ人法(ADA)はサービスアニマルであるかどうかを判断するための一連のガイドラインを定めています(注3)。誰もが障害のある人が補助犬を同伴する機会を奪いたいはずがありません。
残念ながら、多くの人々(そして時には私たちの患者でさえも)が、自分のペットを店やホテルに同伴したいがために、この貴重な人間と動物のパートナーシップを乱用しています。
手数料さえ支払えば公式文書のように見える証明書、身分証明書、また犬の首輪に着けるタグを手に入れることができる、信頼性の明らかでないオンラインショップが多数あります。ADAはこの種のプログラムを認めておらず、これらの証明書がサービスアニマルの書類として何ら意味もなさないことは明らかです。
ここでさらに難しいのは、ADAの要件を把握して、それが本当に正規のパートナーシップなのか、またこの制度の抜け穴を利用したものではないのかを判断し、それぞれの状況を見極めることです。

ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるためにの他の記事
- ペットの熱中症対策
- 補助犬およびサービスアニマル(情緒障害サポート犬)の救急搬送
- 火災における犬と猫の救急医療判断と治療
- 日本の災害現場では消防士がペットを救命処置できない
- ペット同伴避難拒否とその法的課題
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方