2020/05/11
ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために
規則と責任
米国司法省は、2010年9月15日にADA規則の改訂を公表し、州政府および地方自治体サービスと公共施設、商業施設の両方に求められる事項を明らかにしました。救急医療機関は、次の3つの重要な規定を認識しておく必要があります。
1. 2011年3月15日より、犬のみがサービスアニマルとして認められます
2. サービスアニマルとは、障害を持つ人のために働き、任務を果たす訓練を個別に受けた犬のことです
3. 一般的に、組織・団体(病院への搬送前の救急隊を含む)は、一般の人の出入りが許されている全ての場所において、サービスアニマルの同伴を認めることが義務付けられています(注3)
サービスアニマルとは、障害のある人のために働き、任務を果たす訓練を個別に受けた犬として定義づけされています。サービスアニマルは働く動物であってペットではありません。トレーニングを受けた仕事や任務は、その人の障害に直接関わるものでなくてはなりません。
この種の仕事や任務の例としては、視覚障害者の誘導、聴覚障害者への警告、車いすのけん引、発作を起こしている人への注意喚起と保護、精神疾患のある人に処方された薬の服用を促すこと、不安状態に陥ったPTSDの人を落ち着かせること、またこれら以外にも重要な任務の遂行が挙げられます(注3)。
重要なことは犬またはその他の動物の役割が慰め、セラピーまたは情緒障害サポートに限られる場合、ADAではサービスアニマルには認定されないことに注意することです。これらの動物は特定の仕事や任務を実行するようには訓練されていないため、ADAのサービスアニマルとしての資格はないのです(注3)。
救急車で搬送される患者に情緒障害サポート犬の同伴を許可することは、連邦法的には義務ではありません。しかし、一部の州や地方自治体においては情緒障害サポートアニマルを公共の場に同伴することを許可する法律があり、それらの法律は、救急搬送にも適用される場合があります。
事業所で定められているポリシーや手順には常に従う必要がありますが、総体的な状況や可能な選択肢を考慮して、情緒障害サポート犬を乗せるよう試みることがベストな実践といえるでしょう。
患者と犬を同伴することを許可する決定は、最終的には救急隊員に委ねられており、患者が犬を必要としているか、患者が動物をコントロールすることができるか、および救急隊員が犬を安全に運ぶことができるかどうかに基づいて決定されます。
搬送時の注意事項
店舗、レストラン、公共の場所、ホテル、さらには航空会社に対するADA要件は、救急車の要件とは異なります。ADAによると、公的サービスを提供する州および地方自治体、企業や非営利団体は、通常、一般の人々の立ち入りが許可されている施設の全ての場において、サービスアニマルが障害のある人に同伴することを許可する必要があります。
店舗、レストラン、公共の場、ホテル、さらには航空会社においては、サービスアニマル/情緒障害サポートアニマルをより広義に解釈するよう求められています。救急車は補助犬のみを乗せることこが求められており、それ以外の全ての動物に関しては、救急隊員は合法的に乗車を拒否することができます。
犬がどのような補助の役割を果たしているのかが不明な場合は、限られた質問だけが許されています。救急隊員は次の2つの質問をすることができます。
1)犬は障害のために必要なサービスアニマルかどうか?
2)犬が訓練された仕事や任務は何であるか?(注4)
救急隊員は、その人にどのような障害があるのかを尋ねたり、医療記録の提示を求めたり、犬が仕事や任務を実行する能力を示すよう頼んだりすることはできません。救助隊員は、犬を正規のサービスアニマルとして受け入れる前に、訓練を受け、認定され、またはライセンスを習得したことを証明する文書を要求することはできません。サービスアニマルは、サービスアニマルであることを示す胴着やその他の識別できるものを着用している必要もありません。
病院への搬送前の救急隊員は、次の3つの主な理由のいずれかによってサービスアニマルの輸送を拒否することができます。
1. 補助犬が救急隊員の救命ケアを提供する能力を「根本的に変えてしまう」場合
2. 犬がコントロール不能であり、持ち主が犬を効果的にコントロールできない場合
3. 犬が排泄のしつけをされていない場合(注3)
患者は常に補助犬をコントロールするよう求められます。つまり、サービスアニマルの働きを妨げる場合、あるいは個人の障害により装着させられない場合を除き、補助犬はハーネスをはめ、ひもや鎖でつながれていなければなりません。もしつなげない場合は、個人は声、合図またはその他の効果的な方法を用いて動物を制御する必要があります。
患者が意識不明の場合、または重大な救命処置を必要とする状態にあり、犬の存在が搬送中のケアまたは安全性を損なう場合は、犬は別の方法で運ぶ手配をした方がよいでしょう。
ADAは、アレルギー、個人的な偏見、恐怖など、上記以外の理由で補助犬の同伴を拒否することを許可していないことに注意してください(注3)。ADAは補助犬が共に搬送されない場合に、誰が犬の面倒を見るのかを明確にしていませんが、搬送前の救急隊員が、患者と犬ができるだけ早く再会できるようにあらゆる努力をすることを奨励しています(例えば、家族や友人の車、警察車両などを使って)。
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