感染症対応計画を策定していた組織と、それ以外の組織の差は?

では、BCP や感染症対応計画を策定している組織とそうでない組織にはどのような差があるのか。

まず、これまでの対応にどの程度課題を感じているかを評価してもらい、その結果をBCP 策定レベル別、感染症対応計画の策定レベル別にクロス分析した。下のグラフは感染症対応計画の策定レベル別にクロス分析した結果だが、どの策定レベルにおいても「ある程度課題がある」が最も高く、「まったく課題がない」との回答はほぼ皆無という点では共通している。これはBCP の策定レベル別のクロス分析でも同様の結果となった。また、回答数はわずかだが、計画を定期的に見直している組織については、「かなり課題がある」より「あまり課題がない」が若干ながら上回った。

 

次に、具体的な課題を探るべく、計20の項目について、1.まったく課題がない、2.あまり課題がない、3.ある程度課題はある、4.かなり課題はあるの4段階のリッカート尺度で回答してもらい、これらの回答を感染症対応計画の策定レベル別にクロス分析し、各項目について、どの程度の差が生じているかを算出した。

その結果、感染症対応計画を策定し見直している組織とそうでない組織の回答に大きな差が出たのは「BCP /感染症対応計画の策定」やその中身に加え、「状況に応じた対策の実行」「感染者が出た際の対応手順」「在宅勤務の体制整備」「日常的な教育・訓練」「日々の対応状況の記録と検証」などとなった。感染症対応計画を策定して定期的に見直している組織にとって最も大きな課題は「マスクや消毒液の備蓄」で、前号で紹介した全体平均とは異なる結果となった。

逆にこれまでの対応で役立った取組や製品・サービスについて同様の分析を行ったとこころ、「社員への感染症予防教育」「様々な事態を想定した訓練」「クロストレーニングやジョブローテーション」「全社的なリスクマネジメント活動」などの項目について、大きな差が出た。

 
 

 

今後、感染症対応計画や感染症を想定したBCPを策定するにあたり、こうした点を強化することが、実効性を高める上でのポイントになると言えそうだ。

本記事は、BCPリーダーズ5月号に掲載した内容を連載で紹介していきます。
https://bcp.official.ec/items/28726465