山本委員長(右)の「試案」という形で、広尾病院の建て替えは現在地で事実上決定した

東京都は24日、「首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会」の第8回会合を開催。災害拠点病院である渋谷区の都立広尾病院の建て替えについて報告書のほか、委員会の意見書として「委員長試案」を審議し、了承した。現在地か移転かで揺れていたが、意見書では現在地での建て替えを提言。都ではこれに従い、今秋に再整備の基本構想をまとめるとし、事実上決着した。報告書では2023年度に予定していた開設を延期する方向や、災害対応機能の強化を盛り込んだ。

広尾病院は1980年に竣工。老朽化のために建て替えることとなり、2015年に閉館の同区青山にある「こどもの城」の土地に移転する方向で、2016年度予算に同国有地購入費用370億円が計上された。しかし経緯が不透明だとして、2016年12月に小池百合子知事が白紙の意向を示していた。

意見書では再整備にあたって、現在のベッド数を縮小すること、敷地の容積率を現時点で最大限活用していないことから、現在地建て替えでも十分に災害対応のスペースが確保できるほか、施設・設備の強化が可能であるとした。また建て替え中は周辺の拠点病院と協力し補完することなどで対応。長年この地で診療をしてきた経験と実績を地域貢献にも生かせることもあり、現在地建て替えを決めた。

都病院経営本部によると10日の前回会合後、委員から整備地についての意見を聴取したところ全員が現在地建て替えに賛成だったという。山本保博委員長(一般財団法人・救急振興財団会長)は「これまでの流れを試案としてまとめた。状況変化を踏まえ、広尾での建て替えが望ましいと考えた」と説明。広尾病院の江川直人院長は「建て替え期間中、機能減はあるかもしれないが、地域の医療機関と連携していく」と述べた。

現在地での建て替えをふまえ、報告書では事実上の延期として2023年度開設のスケジュールを再検討するとした。病院機能については建物を免震にする。現在の478床から400床程度に縮小し、現状で210%程度しか使っていない敷地の容積率を317%まで最大限活用することで、災害時は平時の2倍の入院患者受け入れ、災害対策本部やトリアージスペース、応援医療チームの参集スペースといった必要なスペース確保を行う。テロなどNBC(核・生物・化学)災害対応として専用貯水槽付きのシャワー施設を整備。現行と同等の屋上ヘリポートを整備する。

都では委員会の決定を受け、今秋に基本構想を、その後にさらに具体的な基本計画を策定する。新たな整備スケジュールは基本計画の段階で決める予定。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介