防潮堤頻度の高い津波想定し整備 
防潮堤の高さは、2011年6月に政府の中央防災会議が発表した「レベル1」の津波想定に基づいて整備する。中央防災会議では、数十年から百数十年に1回発生するものを「レベル1津波」東日本大震災のような最大級のものを「レベル2津波」と定義。レベル1は、越水を防ぐために相応の防潮堤を整備するが、レベル2は減災を基本にするとした。レベル1の設計指針は2011年7月に国交省が通知している。 

通知によると、防潮堤の高さは、各地域における過去の津波の痕跡高や歴史記録文献等の調査で判明した過去の津波の実績と、必要に応じて行う試算データを用いることにより算出する。宮城県では今回、22の区域に分けて高さを割り出した。堤高が最も高いのが中島海岸(気仙沼市)の14.7m。県内では現在、防潮堤の補修工事のほか、港の防波堤の内側部分に堤防機能を付加する新設工事などが盛んに行われている。

盛土構造の道路を二線堤に
海岸に並行して南北に走る県道や鉄道が、防潮堤と共に二線堤の一翼をなすものとして、県南部の平野部で計画されている。対象となるのは県道と市町村道。県道関係の整備延長は18.5㎞。高さは各所で異なるが2~4m。道路の原形復旧はほぼ完了し、現在は盛土構造道路の調査・設計が進められている。 

また、自治体の中には、亘理郡山元町のように、不通になっているJR常磐線の再整備に併せて、駅や駅周辺街区の内陸部移転とともに線路を高盛土にするなどの対策を講じているところもある。

避難ビル・タワー、誘導サイン整備も 
津波から命を守るには、いかに避難するかも重要な課題だ。東日本大震災では、◇指定避難場所自体が被災してしまった◇避難所が狭くて入りきらなかった◇案内誘導が悪かった◇車で避難したが渋滞した◇避難しようと思わなかった―など、さまざまな課題が浮き彫りとなった。 

これを受けて、宮城県では、“津波避難マニュアル”を再検討するとともに、「津波避難のための施設整備指針」をまとめた。指針では、リアス部と平野部の地域特性に併せた避難施設の在り方を検討。地域内におけるあらゆる避難ケースの想定のもとに、民間の既存ビル(RCとSRC造のみ)を津波避難ビルに指定して外階段を設けたり、避難施設が不足している場合には、津波避難タワーや人工丘を新設するほか、避難誘導サインの整備の在り方を解説している。


大震災の約6割の被害が宮城県
宮城県では、多くの人命と共に、全壊住宅8万2889棟、半壊住宅15万 5099棟、非住宅2万8747棟の建築被害(2013年7月31日現在)のほか、防波堤や防潮堤、河川堤防、道路、港湾施設などの公共土木施設に加え て、農地の塩害などにも見舞われた。国が2012年3月にまとめた東日本大震災の被害総額は16兆~25兆円。県集計被害総額は9兆1458億円 (2013年6月10日現在)同県が国に要望した復興事業費は12.8兆円。(国の直轄分除く)に上る。同震災で浸水した宮城県の浸水面積は327㎢(東 京都の約15%に相当)で震災エリア全体の過半を占め、犠牲者数、被害額とも震災全体の約6割に相当する。

想定外の大津波、防潮堤も越水人工物による防御と予測の限界
我 が国の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した東日本大震災は、識者の想定を超える大きなものだった。津波の高さは仙台港で7.2m、石巻市鮎川で 8.6m以上。最大遡上高は、三陸の女川町で34.7m。津波は防潮堤も越水して街をも飲み込んだ。三陸地域では、沿岸部にあった産業施設も住居もさらわ れてしまい、県南部の平野部では、海岸から内陸部の数㎞の地域まで浸水、沿岸部の家屋はもちろんのこと、広大な農地も海水に浸った。ハザードマップの浸水 域を超えた区域でも人的被害が生じた。