前ページの4つの計画を総合して、私たちは「福祉防災計画」と名付けています。実務的には、既存の消防防災計画を土台として避難確保計画、BCPを作成し、必要に応じて福祉避難所計画を加えて福祉防災計画とします。

福祉防災計画の全体像(出典:鍵屋作成)

BCPのひな型

福祉防災計画の中で中核となるのがBCPです。BCPは事前準備、初動から収束までの広範囲を対象とし、長期間の避難生活にも対応できます。東日本大震災後、私たちは厚生労働科研費を得て3年間、研究を重ね、被災地の福祉施設職員らとの協働により、次の重要課題を抽出しBCPのひな型を作成しました。

【避難支援】
避難場所、避難方法、持ち出し品などについて、あらかじめBCPにより決めて訓練しておくことで、避難行動がしやすくなります。これによりリーダーは、状況に応じて早めに判断、行動できます。すなわち、BCPはリーダーの危機管理を支援します。

【安否確認】
大災害発生直後には、要援護者及び関係者の安否確認が重要課題です。しかし、多くの場合、安否確認方法は携帯電話や自宅電話の連絡網にとどまっており、また個人情報保護の観点から、要配慮者情報は極めて限定された場所におかれていて、効果的な安否確認がなされていません。

安否確認については、ICTを活用した新たな手法が開発される一方、声掛けなどを含めて近隣職員が訪問したり、地域住民や要援護者団体などと連携する方法があるので、施設の強みを活かしながら対策を講じる必要があります。

【支援者の確保】
従来の消防・防災計画は、長期間、避難先で福祉サービスを継続することは考えられていません。実際には入所施設だけでなく、通所施設や特別支援学校においても親族の引き取りがなければ、施設や避難場所において支援を継続しなければなりませんでした。

従って、各施設、法人が互いに支援し合えるように協定を結んだり、全国組織との連携により、直ちに支援者を確保できるように検討を進めておく必要があります。