福祉施設の災害対応と立地

台風19号の被害/長野市

一昨年の西日本豪雨災害、昨年の東日本台風災害では、多くの福祉施設が避難を余儀なくされ、使えなくなった施設では他の施設を借りたり、仮設の福祉施設を建設して福祉サービスを継続するなど、大きな被害を受けました。いくつかの施設からは、当時、まさに「命からがら」で逃げた、という避難状況をお聞きしました。

福祉施設は1989年のゴールドプラン以降に建てられたものが多く、市街地より河川の近くや山裾など、浸水、土砂災害を受けやすい地域に立地していることも多くあります。そのような施設では、事前の計画作成と訓練による点検・見直し、危機が近づいた時の迅速な行動を支援する道具が必要だと改めて実感したところです。

福祉防災計画とは

これまでの災害履歴、福祉施設の特性を踏まえると、高齢者や障がい者、乳幼児等を支援するためには、次の4つの計画が必要です。

(1)消防(防災)計画:火災や地震発生時に、一時的に安全を確保するための、初期消火、救急救助、避難誘導、応急手当などができるように法定計画として作成されています。

(2)避難確保計画:気象災害や津波災害に備えて、安産な場所に避難するための計画で、2018年6月に浸水想定区域、土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設に作成が法律で義務付けられました。職員は気象情報や警戒情報へのリテラシーを高め、避難支援に必要な計画及び訓練を充実する必要があります。

(3)BCP:福祉施設では避難だけでなく、避難後の避難生活も考えておかなければなりません。利用者への福祉サービスの継続が不可欠だからです。しかし、法定化されていないためか、BCPを作成している施設は少ないのが現状です。2013年(平成25年)8月時点において、福祉施設で「BCPを策定した」のは4.5%、策定中が6.9%に過ぎません。データは古いのですが、近年は、福祉事業に関してはサンプル数が少ないことを理由に公表されていないのです。

(4)福祉避難所計画:施設が無事で、周囲が被災していれば地域住民が福祉施設に避難してくるかもしれません。そのときに、施設を要配慮者の避難所として活用する計画です。実際に、東日本大震災、熊本地震では多数の住民が福祉施設に避難してきました。