2020/07/16
令和2年7月豪雨
浸水住宅の復旧に技術的ガイドライン研究
■住宅の浸水復旧手順は確立されていない
床を残して乾かす方法もあり得る
信州大学工学部建築学科助教 中谷岳史氏に聞く
――昨年、自宅が浸水被害を受けた際、最初に突き当たった課題は何ですか。
EPA(米国環境保護庁)が出しているガイドラインは、ハリケーンなどで浸水被害を受けた住宅に、48時間以内の清掃・消毒を推奨しています。住宅が床上浸水すると、それほど短期間でカビが発生してしまうのです。
しかし日本の水害において、この48時間という貴重な時間は、ほとんどが床拭きや壁掃除、あるいは水に浸かった物の片付けや廃棄に使われてしまうのが実情でしょう。被災直後は作業種類と作業量が膨大です。私自身、将来のカビ発生を見越した初期対応は困難でした。
――適切な初期対応は極めて難しい、と。
一番判断が遅れたのが壁の断熱材の撤去です。被災17日後の作業になってしまい、カビが生えてしまった。壁表面が濡れていなかったので、初期の時点で見逃してしまいました。

被災13日後にコンセントの交換工事を行った際、コンセントボックスから壁内部がよく見えなかったので、押入の側壁を一部開口。すると壁内部に泥がたまり、カビが発生していました。

断熱材(繊維系)は湿っていて、触診したところ浸水高さより10~20センチ高い位置まで濡れていた。壁の中で断熱材が水を吸収するというのは、盲点でした。
もし被災後4~5日の時点で壁を切り、内部の断熱材を撤去していたら、被害は極めて少なく済んだと思います。壁の石こうボードと断熱材は、遅くとも被災後1週間以内に除去し、災害廃棄物として出すことが望ましいと考えます。
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