2020/07/16
令和2年7月豪雨
浸水住宅の復旧に技術的ガイドライン研究

■九州中心に島根や岐阜・長野も甚大な被害
梅雨前線の停滞による豪雨が九州を中心に河川氾濫や土砂災害を引き起こし、広範囲で甚大な被害が発生している。気象庁はこの豪雨を「令和2年7月豪雨」と命名。政府は「特定非常災害」に指定するとともに「激甚災害」にも指定する方向だ。
出水期に入り、感染症との「複合災害」が懸念されていた矢先。避難所の3密回避、避難先の分散が求められているが、15日までに全半壊を含め約1万5000棟の住宅が浸水被害を受け、今後も増える見通しとなっている。
6月18日に本サイトに掲載したインタビューで「レジリエントな住まい」に焦点をあてたが、今回また、住まいの自立回復を再考する。
■台風19号水害の自宅復旧を発信
信州大学建築学科助教の中谷岳史氏は、昨年の台風19号で長野市内の自宅が床上浸水。被災直後からの対応をほぼ毎日フェイスブックで発信し、復旧までにどのような作業をどのように行ったかを実践事例として伝えてきた。

復旧はすでに終了したが、自身の経験を将来の水害に生かそうと、浸水した住宅の復旧手順・方法についての学術研究を開始。被災後、参考になる情報が少なかったことから、専門の論文や技術報告だけでなく、最終的に一般の人も使える浸水復旧のガイドライン作成を目指す。

住宅を早期に乾燥させてカビを防ぐには、被災後1週間の対応が勝負という。しかし、膨大な作業に追われて優先事項が後回しになり、それが後の居住環境の悪化や費用・時間のロスを招いてしまうケースが少なくない。
中谷氏は「感覚ではなくエビデンス(科学的根拠)にもとづく対応が重要」とし、復旧作業条件が違う複数の住宅でカビの増殖過程や含水率変化の違いを観察。今後は実大の浸水実験も行い、復旧の手順・方法と家の乾燥、居住環境の関係についてデータを収集する。成果は2021年度をめどに学会の論文や技術報告書にまとめ、同時に一般の生活者や工務店らに向けた復旧手順のレシピとしても公開する予定だ。
自身の復旧作業経験とその時に感じた技術的課題、今後の研究について中谷氏に聞いた。
なお、中谷氏の自宅は長野市篠ノ井地区、延べ床面積100平方メートルの2階建て、ツーバイフォー工法の床断熱、基礎通気口あり。千曲川堤防の越水により建物の1階床上30センチまで浸水し、半壊判定となった。浸水時間は24時間以内、泥の堆積厚さは1センチ。被災初日に工務店に連絡し、廃棄用トラックとスタッフ数人、大風量ダクトファンと床下排水ポンプを依頼した。
https://www.risktaisaku.com/category/BCP-LReaders-vol4
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