2020/07/21
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
物流サービスの利用意向にも変化
なお図3の左側は物流を自前で行っているか(in-house logistics)サードパーティ・ロジスティクス(third-party logistics:3PL)(注4)を活用しているかを、右側は3PLの活用に切り替えるかどうかを尋ねた結果である。回答者の 3分の1程度が現在3PLを活用しているが、パンデミックの影響を受けて12.4%が3PLの活用を増やすと回答している一方で、7.8%が逆に減らすと回答しているのが興味深い。なお、3PLの活用を増やす第一の動機は、パンデミックによる経営状況の変化を踏まえた、物流に関する人件費の削減であることが指摘されている。

本報告書では他にも、企業における在庫管理のあり方や財務戦略なども含めて、さまざまな観点からパンデミック後の変化について調査されている。また従来のBCIによる調査報告書と比べて、外部の文献などの参照も多く、サプライチェーンにおけるパンデミックの影響やパンデミック後に予想される変化について、広範囲にわたって論じられているので、多くの皆さまにお読みいただければと思う。
■ 報告書本文の入手先(PDF 52ページ/約4.4MB)
https://www.thebci.org/resource/covid19--the-future-of-supply-chain.html
注1)BCIとは The Business Continuity Institute の略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界 100 カ国以上に9000人以上の会員を擁する。https://www.thebci.org/
注2)https://www.resilience360.dhl.com/
注3)これまで本連載で紹介させていただいた通り、BCIでは2020年3月から5月にかけて2週間ごとに6回のアンケート調査を実施している。第6回のアンケート結果は次の通り紹介させていただいた。
第102回:海外企業における新型コロナウイルスへの対応状況【第6報】
BCI / Coronavirus Organizational Preparedness 6th Edition
https://www.risktaisaku.com/articles/-/33129(2020年6月2日掲載)
また、これらの一連の調査とは別に、これまでの対応状況の振り返りやパンデミック収束後の変化を含めた観点での調査が実施され、その結果が5月21日に公開されている。
第101回:パンデミック後に予想される状況変化と適応のための課題
BCI / Coronavirus - A Pandemic Response 2020
https://www.risktaisaku.com/articles/-/32613 (2020年5月26日掲載)
注4)サードパーティ・ロジスティクスとは、企業が物流業務をまとめて(場合によっては物流部門の業務の大半を)物流専門の企業に外部委託する形態をいう。
- keyword
- サプライチェーン
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方