2020/10/08
事例から学ぶ
大規模自然災害時の物流の確保は日本社会が抱える大きな課題だ。被災地支援物資の配送遅れやミスマッチがたびたび指摘されるように、強靭な物流体制が隅々まで構築されているとはいいがたい。この問題の解決に向け、数年前から全国的な組織づくりを進めているのが「桃太郎便」の宅配サービスで知られる丸和運輸機関(埼玉県吉川市、和佐見勝社長)。「一般社団法人AZ-COM(アズコム)丸和・支援ネットワーク」(AZ-COMネット)を立ち上げて全国の中小運送会社を組織化、経営を支えながら連帯・結束を図り、物流基盤の強化を目指す。これにより行政や企業のBCPを物流面から支援していく考えで、いわゆる社会貢献活動に終わらせず、一連の取り組みを事業機会ととらえて継続していくスタンスだ。AZ-COMネット理事長で丸和運輸機関社長の和佐見勝氏に、取り組みの背景、目的、今後の展開を聞いた。一問一答形式で紹介。
丸和運輸機関/一般社団法人AZ-COM 丸和・支援ネットワーク(埼玉県吉川市)
有事の物流支援には運送会社の全国組織が必要
――丸和運輸機関が取り組んでいる有事の物流、いわゆる「BCP物流」とはどのようなものですか。
BCP物流というのは、有事における行政や企業のBCP対策を物流面から支援すること。もちろんそれは、運送各社がそれぞれのBCPの中で考えていることです。しかし実際は、災害が起きると依然として物流は止まる。一定エリア内の対応はできても、広域的な災害に対応できる体制はできていません。
阪神・淡路大震災にしても、東日本大震災にしても、最前線の小売店舗に商品がなかなか届きませんでした。運送各社も従業員の安全を確保しないといけませんから、おいそれと「はい運びます」とはいかない。ゆえにコンビニチェーンも店を開けられません。
つまり、BCP物流に本気で取り組もうとするなら、相応の組織やノウハウが全国規模で必要になるのです。
――その体制を今構築している、と。
今になって構築に乗り出したというより、いろいろな経験を積んできた結果、自然体でそうなっているということです。
われわれはこれまでも、自然災害が起きるたび、現場に駆け付けるかたちで物流支援に取り組んできました。それこそ阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震と、経験の中でノウハウを蓄積してきたわけです。
それは、BCPとか事業継続といった枠組みがあって取り組んだものではありません。しかし現実に周りを見まわしてみると、われわれのような経験を持って対応できる組織は少ない。一方で、最近は自然災害が激甚化しています。特に豪雨や台風などの気象災害は、これまでにないような被害を毎年のようにもたらしています。
そうした状況を鑑みるに、今こそわれわれが本格的にBCP物流に取り組まないといけないと思うわけです。
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