第122回:論文を通して知る、企業のレジリエンスに関する研究の現状
Conz 他 / A dynamic perspective on the resilience of firms: A systematic literature review and a framework for future research
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
田代 邦幸 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
本連載ではレジリエンスに関する調査研究を幅広く紹介しているが、その研究対象は国単位から自治体、地域、コミュニティー、サプライチェーンなどさまざまである。その中で今回は「企業のレジリエンス」を対象とした論文を紹介させていただく。
今回紹介する論文(注1)は、イタリアのパヴィア大学(University of Pavia)の研究者2人によるもので、タイトルに「resilience of firms」と書かれている通り、企業のレジリエンスを対象としている(「firms」なので法人格のない事務所や商店なども含まれていると考えられる)。他の論文では非営利組織や公的機関も対象に含められるように「組織のレジリエンス」(organizational resilience)とされる場合もあるが、本論文では明示的に非営利組織などが対象から除外されている。
また副題にあるように、前半で企業のレジリエンスに関する系統的文献レビュー(systematic literature review)の結果を示し、後半ではそれを踏まえて今後の研究のためのフレームワーク案を示すという構成となっている。
系統的文献レビューというのは、ある調査範囲から多数の文献を収集した上で、一定の方法に基づいて整理・スクリーニングを行い、絞り込まれた文献を精査・分析する手法である(注2)。今回の論文では「ビジネスや経営学の分野において、企業のレジリエンスはどのように定義され、概念化されているか?」というリサーチクエスチョンを設定して系統的文献レビューが行われている。