ペーパーレス化が進まない理由と段階的導入のポイント
第6回:導入してわかったテレワークの課題と解決策(2)

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/12/16
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
人との接触機会を減らす感染防止対策としてテレワークを取り入れてみたものの、うまくいかなかった企業の中に「自社のペーパーレス化が進んでいなかったこと」を理由にあげるところが多くあります。
ペーパーレス化では、さまざまな書類を電子化して、それらのデータをオンラインで管理することから、従業員は自宅からでも時間の制限なくアクセスできるようになります。今回は、テレワークを円滑に行うための重要な前提条件となるペーパーレス化について考えます。
ペーパーレス化は多くの場合、テレワークの導入と関連づけて話題となりますが、実はテレワーク以前からさまざまな理由で導入が進んでいました。
一つは、業務効率化の観点です。ペーパーレス化が行われていないと、膨大な量の紙媒体をファイルする作業、また必要な資料を探す作業、そして使い終わった後に元の場所に戻す作業などが発生します。さらに、紙の資料の保存期限が切れた場合にも、情報セキュリティーの観点からシュレッダーなどを使い廃棄処分をすることが必要です。
ペーパーレス化を導入すれば、大量の電子データをサーバーに格納することができ、その結果、キーワードによる検索が可能となるなど、紙媒体資料の時代には必要であった管理時間を大きく減らせます。また、環境への配慮やエコ意識からペーパーレス化を進めた企業もありました。
具体的には、会議資料をPDFの形で配布する、受信したファクシミリは直接パソコンに保存するなどの対応によって紙の使用量を減らすことは、森林保護にもつながり、企業のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組み(「目標15 森の豊かさも守ろう」)にも貢献できます。
ペーパーレス化の導入で業務効率化が図れるとわかっていても踏み切れず、その結果、テレワークの継続が難しくなっている企業もみられます。ペーパーレス化の導入を難しいと判断する背景には、次のようなことが考えられます。
法律に加え、関係する省令やガイドラインなどで「書面」で保存、または交付することが求められている場合はペーパーレス化ができません。現状では、宅建業法における重要事項説明書や賃貸契約書がこれに該当します。
社内の書類や資料がすべて紙媒体である場合、それらを一度に電子媒体に置き換える費用が必要であるとともに、導入以降についても、電子データベースで情報共有から申請・決裁に至るまでの業務を行うためのシステム構築に費用がかかります。
また、これまで使っていたIT機器類も、ペーパーレス化に向けて大量の電子データを保存できるサーバーや、それに対応できる通信機器に更新するなど、社内ITに関するハードの整備が求められます。
法律上の制約がない場合でも、従業員のペーパーレス化に対する理解が得られないケースが考えられます。紙媒体での業務に慣れていることから、紙の書類で仕事をしたい、パソコンのディスプレイ画面が小さく文字が読みづらいなど、ペーパーレス化への反対意見にも一定の配慮が必要です。
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