職場環境や仕事のスタイルが変わっても、企業は引き続き従業員の安全と健康を確保(写真:写真AC)

前回は「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(2021年3月25日、厚生労働省)」(以下、「ガイドライン」)の中から、テレワークに特有な事象の取り扱いについて説明しました。今回は、テレワークにおける安全衛生の確保について考えます。

1.安全衛生関係法令の適用

労働安全衛生法等の関係法令のもとで、企業は、職場において従業員の安全と健康を確保するために必要な具体的な措置を講ずることが求められています。

健康相談できる体制はあるか(写真:写真AC)

テレワークを導入すると、業務を進める場所が自宅やサテライトオフィスになる、また顧客・同僚との連絡や打ち合わせのスタイルが変わるなど、さまざまな環境変化があります。企業は、そのような中でも引き続き、従業員の安全と健康の確保のための措置をとることが肝要です。

従業員の安全と健康の確保のための措置には、次のような項目が考えられます。

❶健康相談を行うことができる体制を整備する
❷従業員の仕事の内容を変更し、テレワークを初めて行わせるときは安全衛生教育を実施する
❸従業員に必要な健康診断を受診させ、その結果などを受けた措置をとる(常時、自宅でテレワークを行っている従業員には、本人が健診機関を選択できるように配慮する)
❹過重労働による健康障害を防止するため、長時間労働を行った従業員に対して、医師の面接指導を受けさせ、その結果を踏まえた措置をとる など

このほかにも、従業員の安全と健康を確保するためには、衛生管理者等を選任すること、そして安全・衛生委員会等を開催することなども重要なポイントとなります。

2.自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策

メンタルヘルス対策も(写真:写真AC)

テレワークを行う従業員はワークスタイルが大きく変わるにもかかわらず、上司は別の場所にいることから、部下が心身に変調をきたしても、多くの場合、その変調に気づくことが難しくなります。


このような状況のもとでテレワークを円滑に行うためには、次の項目を押さえておくことが肝要です。

❶ストレスチェックを定期的に実施し、その結果を従業員に通知し、さらに希望の申し出があれば面接指導を実施する(従業員数が50名未満の企業の場合は努力義務)
❷テレワーク中の従業員が時期を逃すことなく、ストレスチェックや面接指導を受けることができるように配慮する(メールやオンラインによる実施を検討する)
❸同僚とのコミュニケーションや日常的な業務相談・業務指導などを円滑に行うための取り組みを行っている(定期的・日常的なオンラインミーティングの実施などを検討する)
❹災害発生時や業務上の緊急事態が発生した場合の連絡体制を構築し、テレワークを行う従業員に配慮している など