昨年以降のさまざまな感染症対策、さまざまな経営環境の変化。それらを振り返り、あらためて感染症時代のリスクマネジメントを考える(写真:写真AC)

企業におけるリスクマネジメントは、与えられた経営環境のもとで、リスクを組織として管理し、損失などの回避や低減を図るプロセスです。

新型コロナウイルス感染症の流行長期化によって、企業は、この経営環境の変化への対応策として、テレワークやウェブ会議など新たな業務スタイルを導入しましたが、本連載では、これらの変化についてリスクマネジメントの観点から考えてきました。

今回はこれまでの連載も踏まえて、あらためて感染症時代のリスクマネジメントを考えます。

1.繰り返す感染症の流行~BCPの更新は必須~

新型コロナウイルス感染症の流行は、まだ収束の兆しが見えたとは言えない状況ですが、その一方で、ワクチン接種が進むことによって、社会や経済が元に戻ると考える人もおられるでしょう。

しかし、ひとたびある地域で新たなウイルスによる感染症が発生すると、国家間での人や物の移動が高速・大量となっていることもあり、またたく間に世界的な大流行(パンデミック)となる可能性がこれからも続きます。

我々は、新型コロナウイルス感染症がもたらしたパンデミックより前に、感染症の世界的大流行を経験しています。それは2009年4月に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)です。

この流行において国は、重症者や死亡者の数を最小限にすることを最大の目的に掲げ、広報活動、検疫の強化、サーベイランス、学校等の休業をはじめとした公衆衛生対策、そして医療体制の整備、ワクチンの供給や接種などの対策を講じました。 

新型インフルエンザの教訓が十分生かされたとはいい難い(写真:写真AC)

結果として、我が国の死亡率は他の国と比べて低い水準に抑えることができました。ただ、病原性の高い新型インフルエンザを想定した政府の行動計画を、病原性の低い新型インフルエンザの流行に適用したため、さまざまな混乱が生じるとともに、医療資源の不足などいくつかの課題や教訓が明らかになりました。

しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の流行において、そこで得られた教訓が十分に活かされたとはいえません。

BCPの課題も浮き彫りになった(写真:写真AC)

企業においても同様のことがみられます。当時、新型インフルエンザの流行を契機として、BCPの策定や見直しを行った企業が多くありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行において、マスクやアルコール消毒薬の不足や、感染疑い事例への対応で悩みを抱えたところが少なくありません。

BCPは、策定することが目的ではなく、それを的確に運用することによって、危機的事象が発生した場合に事業を中断させない、そして中断した場合でも速やかに事業を復旧、継続することです。

そのためには、BCPを定期的に更新するとともに、訓練を実施することで、その実効性を高めることが求められます。感染症への対応を例にとれば、備蓄品に不足や期限切れがないか確認する、また社内で感染疑い事例が出たときにどのように対応するかなどの訓練を実施することが重要です。