BCPの更新と水害への対策は企業の急務
第19回【最終回】:まとめ

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2021/07/07
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
企業におけるリスクマネジメントは、与えられた経営環境のもとで、リスクを組織として管理し、損失などの回避や低減を図るプロセスです。
新型コロナウイルス感染症の流行長期化によって、企業は、この経営環境の変化への対応策として、テレワークやウェブ会議など新たな業務スタイルを導入しましたが、本連載では、これらの変化についてリスクマネジメントの観点から考えてきました。
今回はこれまでの連載も踏まえて、あらためて感染症時代のリスクマネジメントを考えます。
新型コロナウイルス感染症の流行は、まだ収束の兆しが見えたとは言えない状況ですが、その一方で、ワクチン接種が進むことによって、社会や経済が元に戻ると考える人もおられるでしょう。
しかし、ひとたびある地域で新たなウイルスによる感染症が発生すると、国家間での人や物の移動が高速・大量となっていることもあり、またたく間に世界的な大流行(パンデミック)となる可能性がこれからも続きます。
我々は、新型コロナウイルス感染症がもたらしたパンデミックより前に、感染症の世界的大流行を経験しています。それは2009年4月に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)です。
この流行において国は、重症者や死亡者の数を最小限にすることを最大の目的に掲げ、広報活動、検疫の強化、サーベイランス、学校等の休業をはじめとした公衆衛生対策、そして医療体制の整備、ワクチンの供給や接種などの対策を講じました。
結果として、我が国の死亡率は他の国と比べて低い水準に抑えることができました。ただ、病原性の高い新型インフルエンザを想定した政府の行動計画を、病原性の低い新型インフルエンザの流行に適用したため、さまざまな混乱が生じるとともに、医療資源の不足などいくつかの課題や教訓が明らかになりました。
しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の流行において、そこで得られた教訓が十分に活かされたとはいえません。
企業においても同様のことがみられます。当時、新型インフルエンザの流行を契機として、BCPの策定や見直しを行った企業が多くありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行において、マスクやアルコール消毒薬の不足や、感染疑い事例への対応で悩みを抱えたところが少なくありません。
BCPは、策定することが目的ではなく、それを的確に運用することによって、危機的事象が発生した場合に事業を中断させない、そして中断した場合でも速やかに事業を復旧、継続することです。
そのためには、BCPを定期的に更新するとともに、訓練を実施することで、その実効性を高めることが求められます。感染症への対応を例にとれば、備蓄品に不足や期限切れがないか確認する、また社内で感染疑い事例が出たときにどのように対応するかなどの訓練を実施することが重要です。
感染症時代のリスクマネジメントの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方