2020/12/25
防災・危機管理ニュース
電気室・IT室にも使われる二酸化炭素消火設備の注意点
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名古屋市中区の「ホテル名古屋ガーデンパレス」で22日、地下駐車場で二酸化炭素を含む消火用ガスが噴出し、駐車場でエレベーターの改修作業に当たっていた作業員が死亡した。この事故での死因は何らかの原因で消火設備からガスが噴出され高濃度の二酸化炭素にさらされたことが原因と見られている。二酸化炭素は呼吸の際に人体から排出され、ドライアイスにも使われる身近なガスであるが、「濃度9%の二酸化炭素にさらされると意識を失い、20%以上では死に至る」(消火設備の専門家である牧功三氏)ことはあまり知られていない。
牧氏によると、最新の消防法施行規則では、二酸化炭素消火設備は原則として自動放出が不可であり、設置できるのは常時無人区画である。また、最近の建物には人体に無害か比較的安全なガスが使われるケースが多いという。
今回の事故につながった全域放出型の自動ガス消火設備は、水を使用したスプリンクラー設備を設置したくない(あるいはできない)場所にはよく使われる」という。具体的には電気室、発電機室、IT室などがこれに該当する。
「消火に使用するガスにはいくつか種類があり、窒素のように人体には全く無害な不活性ガスと、比較的安全なハロン系のガス(FM-200等)、有害な二酸化炭素に大別される」(牧氏)。
牧氏はさらに「消防法では消火ガス放出までの遅延時間が20秒間設けられており、その間に、避難のアナウンスを流すという安全上の対策はできる」と説明。ただし「人が常時いる場所(例えば作業者が常駐するようなIT室、電気室、防災センター)や、駐車場のように一般の方が出入りする場所にこういった消火設備を使用するのは、中毒および窒息の危険性があるため望ましくない」と指摘する。
「ホテルや商業施設など不特定多数の人々が出入りする場所に、全域放出型二酸化炭素消火設備のような危険な設備が設置されているのは不安なため、法律・条令を改正すべきと思われるかも知れないが、建築基準法や消防法には既存不適格というルールがあり、建物が建てられたときの法律に従えばよいことになっている」と問題点を挙げる。
こうした全域放出型二酸化炭素消火設備が設置されている施設について、法律で強制的に対策を取らせることは難しいのが実情のようだ。今回の事故は作業者のミスがあった可能性もあるが、そもそも法令に不備があったため、起きた事故だと言えるかもしれない。
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