デジタルリスクの地平線 ― 国際的・業際的企業コミュニティの最前線
第5回 ヒトあっての物種
新しいテクノロジーやデータと出会ったヒトの反応が新しいリスクを招く
一般社団法人デジタル規範研究所/
代表理事
小原 浩之
小原 浩之
日本の大手総合商社に34年間籍を置き、営業を一通り経験した後、経営企画・連結経営リスク・BCP・個人情報保護・情報セキュリティおよびサイバーセキュリティに関する制度の立案・推進を長年リードしてきた経験を持つ。2018年5月から、英国を本拠地とする国際的NPOであるISFの日本および極東担当代表に就き、グローバル水準のコミュニティー形成を図っている。また、デジタルで繋がっていく「接続性」の中で、人の繋がりを重視した社会デザイン形成に貢献したいと願い、デジタルリスクに関する規範研究やコンサルティングをしている。
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情報セキュリティーは、実のところ「総合実学」とも言うべきかもしれません。多方面にわたる学問や実践知、さらには集合知が参照されたり、練り合わされたりしながら、今なお日々進化しています。新しいリスクは日常的に生まれていますし、理屈は分かっていても制約要因の壁が高過ぎて、対応策を実践できないので、試行錯誤を重ねているといった面もあるのでしょう。
今回は、情報セキュリティーとヒトの関係に思いを巡らせることにしましょう。ビジネスがヒト・モノ・カネの組み合わせの話だとすれば、ビジネスの後見人である情報セキュリティーもまた、ヒト・モノ(テクノロジーやデータ)・カネの話に尽きます。ヒトだけであれば新しい問題とは言えないかもしれませんが、新しいテクノロジーやデータと出会ったヒトの反応が新しいリスクを招くのです。
情報セキュリティーやサイバーセキュリティーについては、テクノロジーやデータなどに関するシステム工学や情報科学分野からだけでなく、地政学あるいは政治学・経済学・法学・倫理学などのさまざまな専門家からのアプローチがあります。しかし、意外と少ないのが心理学からの視点でした。ISFでは、30年間の総合実学の積み重ねを通じて、ヒト中心のセキュリティーを体系化しています。
ISFがTHE EUROPEAN誌と共同出版した、30周年特別レポート、Safe Guarding Businessの中にある、「Putting The People First」(人あっての物種)の章を斜め読みして、それを概観してみたいと思います。