2018/03/02
防災・危機管理ニュース
屋根工事業にドローンを活用しようと、一般社団法人・日本屋根ドローン協会が設立され、1日、設立発表会が東京都港区のベクトルラウンジで開催された。代表理事には 東京都品川区で屋根工事業を営む石川商店代表・石川弘樹氏が就任。屋根に登らず、初期点検を10分で完了できる強みを生かし、 これまでドローン活用に消極的だった屋根業界に向けて安全性の向上、人材不足や高齢化の解決策として普及促進を図っていく。
屋根業界ではドローン導入に消極的な風潮があり、石川氏もその一人だったという。ところが自社点検に試験的に導入したところ、報告時に施主から「これなら(自分で登らなくても屋根の状態が)わかる」とこれまでにない反応をもらい、導入を決意したという。
理事を務めるのは、 CLUE社代表の夏目正樹氏。同社はドローンと連携するアプリなどソフトウェア開発を手掛けており、2017年12月に屋根点検用のiOSアプリ「DroneRoofer(ドローン ルーファー)」をリリースした。アプリはドローン本体と連携しており、iPadのアプリ内でボタンを押すだけでドローンが自動上昇し、上昇後も高さ変更が可能で、撮影はボタンを押すのみ。撮影後は自動で下降するので、コントローラーによる操作は不要となる。アプリ内では顧客別に写真管理機能を備える。
これまで既存住宅の屋根点検を行う場合、できる限り費用を抑えるため、屋根施工業者がはしごで直接屋根に登って点検するのが一般的。 足場も命綱もかけないため、滑落の危険と隣り合わせの作業。従来の住宅1棟の点検業務にかかる時間は2時間程度。厚生労働省の2016年の調査によると、建設業で屋根から墜落・転落した件数は年間846件(このうち40件が死亡事故)。特に2階建て・平屋建てなど低層住宅では、気持ちの油断から高層住宅よりも事故が多いという。
点検業務をドローンに置き換えれば、離陸から撮影・着陸までにかかる時間は約10分程度で済む。直接屋根に登る必要がないため、墜落・転落の危険性がなくなる。上空から撮影した屋根全体の画像を施主と一緒に確認し、必要に応じて タブレット上で画像を拡大しながら異常箇所を特定できる。 石川氏によれば、工事を前提とする詳細な点検業務でない、ふき材の大きな破損・ずれなど基本的な点検業務であればドローンに置き換えられるという。また屋根端部の軒・袖部は危険なため細かく点検できないことも多く、人よりも確実に点検できるメリットもあるという。また点検内容を写真撮影する際も目線の高さでは位置関係を伝えられないことが多く、ドローンを使って上空数10mから俯瞰した画像を使うことで、施主とのコミュニケーションも格段にしやすくなるという。
今後、新協会では屋根事業者や施主に向けたドローン活用の認知促進、正確な操作技能から法遵守や事故予防の知識までを学ぶ 資格制度の創設、ドローンを活用法した新たな屋根業のビジネス創出などを行っていく。 資格は2018年度中の設立を目指すという。石川氏は「もともとドローンにほとんど関心のなかった自分が、日々その可能性を感じ始めている。この驚きを多くの業界の仲間を分かち合っていきたい」と話している。
(了)
リスク対策.com :峰田 慎二
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方