2021/06/23
企業をむしばむリスクとその対策
□解説 いずれ大変なことになると分かっているのに手をつけなかった
確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることを指す「ブラックスワン」という言葉があります。その昔、英語で無駄な努力を意味するたとえに「ブラックスワンを探すようなもの」というものがありました。白鳥の色は「白」に決まっていて、黒い白鳥など存在するはずがないと考えられていたからこその慣用句でした。しかし、1697年にオーストラリアで本当にブラックスワンが発見されて大騒ぎとなります。これを受けて「ブラックスワン」は、一転して想定外の事態が起こり得ることのたとえとして使われるようになりました。
また、「エレファント・インザルーム」という慣用句があります。これは「誰もが認識しているのに、触れないこと」を意味する言葉です。部屋の中にゾウがいる光景を想像すれば、そこにゾウがいることは誰の目にも明らかで、早晩、ゾウは部屋にあるものを踏みつぶし、確実に災いが振りかかって来ることは確実です。しかしながらなぜかそれを放置してしまうことから「見て見ぬふりをする」という意味で使われます。
近年、これら2つの言葉を掛け合わせた「ブラックエレファント」という言葉が登場しました。「いずれ大変なことになると分かっているのに、なぜか見て見ぬふりで、誰も対処しようとしない脅威」を指します。
今回のコロナ禍のことを「ブラックスワン」であると言う人もいますが、リスクマネジメント分野の専門家の多くは、「ブラックスワンというより、ブラックエレファントである」という考え方が主流になりつつあるようです。世界的に流行して大きな被害をもたらす感染症の可能性は、世界保健機関(WHO)などが長きにわたり警鐘を鳴らしていましたし、世界経済フォーラムが毎年発行している「グローバルリスク報告書」では、15年前の発行当初からパンデミックの脅威について記載され続けていたからです。
この「ブラックエレファント」の考え方は、企業におけるリスクマネジメントでも忘れてはならない考えだと思います。
企業をむしばむリスクとその対策の他の記事
おすすめ記事
-
ランサムウェアの脅威、地域新聞を直撃
地域新聞「長野日報」を発行する長野日報社(長野県諏訪市、村上智仙代表取締役社長)は、2023年12月にランサムウェアに感染した。ウイルスは紙面作成システム用のサーバーとそのネットワークに含まれるパソコンに拡大。当初より「金銭的な取引」には応じず、全面的な復旧まで2カ月を要した。ページを半減するなど特別体制でなんとか新聞の発行は維持できたが、被害額は数千万に上った。
2025/07/10
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/08
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/07/05
-
-
-
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方